
ロシア軍は14日、ウクライナ各地で新たなミサイル攻撃を繰り広げた。東部ドニプロペトロウシク州ドニプロでは集合住宅が破壊され、少なくとも14人が死亡した。このほか首都キーウや東部ハルキウ市、南部オデーサなど多数の都市が攻撃を受けた。
複数の都市で電力インフラがミサイル攻撃を受け、ウクライナの大部分で緊急停電が起きている。
ドニプロでの攻撃では9階建て集合住宅の入り口に着弾し、複数の階が破壊された。ウクライナ当局は子供14人を含む73人が負傷したと発表。この攻撃はここ数カ月で最悪規模の被害となる可能性が高い。
現場には大勢の人が集まり、救助活動を見守ったり、救助隊に加わって必死に生存者を探したりしていた。当局によると、これまでに子供6人を含む38人が建物から救出された。
被害を受けた集合住宅は、最寄りの発電所からかなり離れた場所にある。それだけに、なぜこの集合住宅が攻撃対象になったのかは、分かっていない。
ロシア軍ミサイルの精度の低さが原因なのか、あるいはウクライナの防空システムによって撃墜されたものが落下したのかは不明だが、被害状況からして後者の可能性は少ないとされている。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は毎晩定例のビデオ演説で、「ドニプロでのがれき撤去作業は一晩中続くと述べた。「我々はあらゆる人、あらゆる命のために戦っている」。
さらに、民間施設への攻撃を阻止するには、西側諸国がウクライナに必要な武器を提供しなくてはならないと強調した。
「エネルギー戦争」は続くのか
ロシア軍がウクライナの送電網への攻撃を開始してから2週間が経過した。
ゼレンスキー大統領はエネルギーインフラ施設が14日に攻撃を受けたことで、ハルキウとキーウ地域が最も困難な状況に見舞われていると述べた。
ウクライナの国営電力会社ウクルエネルゴは先に、現地時間15日午前0時まで、すべての地域を対象とした24時間体制の電力消費制限を設定したと発表した。
西側諸国とウクライナの当局者の間では、攻撃に適したミサイルがロシア側で不足しているか、あるいはエネルギー施設攻撃にもウクライナ国民が屈しないのが明白なことから、ロシアの「エネルギー戦争」が終わりを迎えつつあるのではないかとの考えが広まりつつあった。
しかし、14日のミサイル攻撃から、ロシアはエネルギー施設攻撃を続けるつもりかもしれないことがうかがえる。
イギリス、ウクライナに戦車供与へ
ドニプロなどへの攻撃に先立ち、イギリスのリシ・スーナク首相は14日、ウクライナのゼレンスキー大統領と電話会談し、ウクライナの防衛を支援するためにイギリス軍の主力戦車「チャレンジャー2」を供与する意向を伝えた。スーナク氏は、ウクライナ軍が「ロシア軍を押し戻す」のにこの戦車が役立つだろうと述べた。
これに対しロシアは、ウクライナに兵器を追加供与すればロシア軍の作戦を強化し、民間人犠牲者が増えることになると主張した。
正教会の旧正月(ユリウス暦)にあたる14日夜、ゼレンスキー氏は同国の西側諸国のパートナーが必要な兵器を提供すれば、ロシア軍による民間人を標的とした攻撃を止めることができると述べた。
ゼレンスキー氏は毎晩定例のビデオ演説で、「それには何が必要か? それは平気だ。我々のパートナーの倉庫に保管されていて、我々の兵士が待ちわびている兵器だ」と強調した。
大統領はさらに、ロシア軍が発射したミサイル30発のうち20発以上をウクライナ軍が撃墜したと付け加えた。