
ネパールで15日に旅客機が墜落した事故で、乗客のインド人男性が墜落の数秒前まで機内の動画をライブ配信していた。動画はインドで急速に拡散されている。一方、旅客機が到着予定だったポカラ空港は16日、パイロットから「予想外の事態」の報告はなかったと発表した。
インド・ガジプール在住のソヌ・ジャイスワルさんは、友人らと4人でネパールを訪れ、事故機に乗り合わせた。機内では動画を撮り、ソーシャルメディアにライブ配信していた。
その動画からは、飛行機が緑と茶色の平地に点在する建物の上をゆっくりと下降していたことがわかる。ジャイスワルさんは自分にもカメラを向けて笑顔を見せると、他の乗客たちも映した。
誰も、あと数秒で自分たちが死ぬとは思っていない様子だった。
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しかしその後、耳をつんざくほどの音と共に飛行機が墜落した。
カメラは録画を続けており、画面には大きな炎と煙が映し出される。エンジンがきしむような音や、ガラスの割れる音がする。
その後、叫び声が聞こえ、動画はそこで終了する。
ジャイスワルさんの友人や家族はメディアに対し、この動画をジャイスワルさんのフェイスブック・アカウントで視聴したと話し、本物だと認めている。
友人のムケシュ・カシュヤプさんは、「飛行機がセティ川近くの渓谷に墜落した時、ジャイスワルさんはライブ配信をしていた」と語った。
地元ジャーナリストのシャシカント・ティワリ氏はBBCに、カシュヤプさんからジャイスワルさんのフェイスブックにあるその動画を見せてもらったと話した。動画は公開範囲がプライベートに設定されているという。
ジャイスワルさんが機内からどうやってインターネットに接続していたかは明らかになっていない。
ネパールの元議員、アブヒシェク・プラタプ・シャー氏はインドのニュースチャンネル「NDTV」の取材に、救助隊が飛行機の残骸から、この動画が撮影された携帯電話を発見したのだと語った。
「この動画は警察から私の友人に送られ、それが送られてきた。本物の記録だ」と、シャー氏は話している。
ネパール当局は、シャー氏の主張や、調査の助けになるかもしれないこの動画について見解を示していない。
パイロットから「異常の報告なかった」
墜落したイエティ航空691便は、ネパールの首都カトマンズからポカラに向かっていた。
ポカラ空港の広報担当アヌプ・ジョシ氏は記者団に、事故当時は「山もよく見え、視界も良好だった」と説明。わずかに風が吹いていた程度で「天候に問題はなかった」と述べた。
地上から携帯電話で撮影された映像には、飛行機が同空港に向かいながら大きく旋回している様子が映っていた。
乗員乗客72人は全員、生存が絶望視されている。
ジョシ氏によると、パイロットは着陸する滑走路を3番から1番に変更すると発信。空港の管制官はこれを承認したという。
「どちらの滑走路も使える状態で、飛行機は着陸の準備ができていた」とジョシ氏は話した。
その上で、ポカラ空港が開設15日でこのような事故に見舞われたのは「大きな不幸」だと語った。
事故現場では、ネパール警察がなお捜索に当たっている。警察関係者は、BBCニュースのラジニ・ヴァイディヤナザン南アジア特派員に、ブラックボックスとボイスレコーダーが発見されたと話した。
生存者発見の見込みがない中、捜索の主眼は事故の原因究明の証拠探しに移行しているという。ネパール政府は、原因究明に向けた調査委員会を設置した。
ネパールでは航空機事故は珍しくない。遠隔地に滑走路があることや天候の急変が、危険な状況を生み出しやすいという。
ヒマラヤ山脈を擁するネパールは、世界でも有数の、飛行機が運航しづらい地形を有している。
過去のネパールの墜落事故では、新しい機体への投資不足や、不十分な規制も批判された。
(英語記事 Indian passenger filmed Nepal plane's last moments/Nothing unusual on doomed Nepal flight - official)