2023年2月8日(水)

BBC News

2023年1月17日

»著者プロフィール

イギリス政府は16日、スコットランド議会が昨年12月に可決した、性別変更の法的手続きを簡易化する法案の正式な法制化を阻止すると発表した。この法案と、イギリス全土における平等保護の取り組みに矛盾が生じるためと説明している。

イギリスの法律では、スコットランドの法律がイギリス全体の法律に抵触する場合、イギリス政府はその取り消しを求めることができる。この権限が行使されるのは、今回が初めてとなる。

スコットランドのニコラ・スタージョン第一首相は、イギリス政府の動きはスコットランド議会に対する「全面的な攻撃」だと述べ、抵抗する姿勢を明らかにした。

スタージョン首相は、イギリス政府が拒否権を発動すれば、「今後も次々と発動される」と警告。スコットランドの内閣はこの法案を「守り抜く」つもりだと述べた。

スコットランド政府は、イギリス政府の決定に対し、場合によっては司法を通して、異議を申し立てるとみられる。しかし現在は、英内閣からの詳細な説明を待っているという。

スコットランドでは2005年から、出生証明書上の性別を男性から女性に、あるいは女性から男性に変更することが認められている。

変更に必要なジェンダー認定証明書(GRC)の申請はこれまで、18歳以上であることや、性別違和(生物学的な性別と性自認に違和感がある状態)の診断書が必要だった。

しかしスコットランド政府は、既存のプロセスは押しつけがましく苦痛を伴うため、GRCの申請をためらう人がいると指摘。対象年齢を16歳に引き下げ、診断書を不要とし、自己申告での変更を可能とする「ジェンダー認定法案」を提出した。法案は86対39の賛成多数で可決された。

こうした性別変更手続きの簡易化は、ヨーロッパの数カ国がすでに導入しているが、イギリスではスコットランドが初めて取り組んだ。

トランスジェンダーの権利活動家はこの法案を歓迎している。一方で反対派の人々は、女性専用のサービスやスペース、法的保護に対する潜在的な影響を懸念している。

「イギリスの平等法に抵触」と政府

イギリス政府が今回行使するのは、スコットランド議会の立法権について定めたスコットランド法の35条。

英内閣は、スコットランド議会の法案がイギリス議会による法律をゆがめ、その対象に「悪影響」を及ぼすと判断した場合、その法案を阻止することができる。だがこれまで、この条項が適用されたことはなかった。

英内閣のアリスター・ジャック・スコットランド担当相は、17日にもこの権限を行使するための法的手続きに入る。また、英下院での演説で、その理由を説明する予定だ。

ジャック氏はスタージョン氏への書簡で、ジェンダー認定法案はイギリスの平等法に含まれている保護規定に「多大な影響」を及ぼすと指摘。男女別のクラブや協会、学校を運営する法的権利や、男女の賃金平等ルールをめぐって懸念が生じていると述べた。

また、「イギリス国内に2つの異なるジェンダー認定スキームが存在する」ことで、「多くの詐欺や信頼できない申請が増える」など、「複雑性が増す」リスクがあると述べた。

「政治の武器にしている」

イギリス政府の発表に対し、スコットランドのショーナ・ロビソン社会正義担当相は「許しがたい」ことだと怒りをあらわにした。

ロビソン氏は、ジェンダー認定法案はイギリス全体の平等法には影響しないと主張。この「政治的」な動きはイギリス政府の「地方分権に対する侮蔑」を示していると述べた。

また、「これはトランスジェンダーの人々の権利にとって暗黒の日であり、イギリスの民主主義にとっても暗黒の日である」と付け加えた。

スタージョン第一首相は、この法案はスコットランド議会の権限内にあるもので、イギリス政府が阻止できる根拠はないと主張。この改革を阻止する動きは、トランスジェンダーの人々を「政治の武器として」使うものだとした。

法案に賛成した野党・スコットランド労働党は、スコットランドとイギリスの双方の閣僚らに、この難局の打開策を見つけるよう呼びかけた。

イギリス議会の最大野党・労働党のイアン・マレー影のスコットランド担当相は、「トランスジェンダーの人々の権利と女性の権利を、(スタージョン氏率いる)スコットランド国民党と与党・保守党の消耗戦の言い訳に使うべきではない」と批判した。

(英語記事 UK government to block Scottish gender bill

提供元:https://www.bbc.com/japanese/64300147


新着記事

»もっと見る