
ウクライナの首都近郊で18日朝にヘリコプターが墜落し14人が死亡したことを受け、原因究明が進められている。ウォロディミル・ゼレンスキー大統領は同日、墜落はロシアとの戦争が引き起こしたとの考えを示した。
ヘリコプターは午前8時30分ごろ、キーウ近郊ブロヴァリの幼稚園の近くに墜落した。
当局によると、デニス・モナスティルスキー内相(42)や内務省高官ら、ヘリに乗っていた9人と地上の5人が死亡した。地上の死者の1人は子どもだという。
墜落が事故以外だと示すものは見つかっていない。ウクライナ側は、ロシアが関与したとの主張はしていない。
しかしゼレンスキー氏は、スイス・ダボスで開催中の世界経済フォーラムの年次総会(ダボス会議)で、「戦時中に事故はない」とビデオ回線を通して述べた。
複数の可能性を調査
ヘリ墜落の原因については、ウクライナ保安局(SBU)がいくつかの可能性を追っている。破壊工作、技術的な不具合、飛行規則違反などが含まれるという。
ウクライナ高官らを乗せたヘリは、探知されないよう低空でウクライナ各地を移動している。そうした飛行はリスクが高くなる。
墜落を目撃した住民らも、ロシアとの戦争が原因だと話した。
ウォロディミル・イェルメレンコ氏は、「霧がとても濃く、電気もなかった。電気がなければ建物は照明がつかない」とBBCに述べた。
他の目撃者は、墜落直前にヘリのパイロットは高層の建物を避けようとし、幼稚園の近くに落ちたと話した。
住民の女性は、自宅がある10階建て集合住宅の上空をヘリが旋回し、ひどい閃光(せんこう)が発生していたとBBCに説明。パイロットは明らかに集合住宅を避け、より小さな建物の近くにヘリを降下させたと言った。
墜落現場に残されたものでヘリの一部だと分かるのは、車の屋根の上に落ちたローターの1つとドアパネルだけだった。すぐ横には、アルミシートで覆われた3体の遺体が置かれていた。
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住民らが子どもを避難
墜落は、出勤前の親たちが子どもを幼稚園に送っていたさなかに起きた。
地元ボランティアのリディヤ氏は、「親たちは走り回り、叫び声をあげていた。パニックだった」と話した。幼稚園に火の手が広がるなか、救急隊と住民らが急いで子どもたちを避難させたという。
住民のドミトロ氏は、フェンスを飛び越えて子どもたちを助け出したと話した。ポリーナという名の少女は顔が血まみれになり、彼女の名前を呼びながら駆けつけた父親は最初、娘だと分からなかったという。
ゼレンスキー氏は、「この悲痛は言葉にできない」、「ヘリコプターが落ちたのは幼稚園の敷地だった」と述べた。
今回の墜落では、地上にいた人たちも多数死傷した。地上でけがを負った25人のうち11人は子どもだった。
ハルキウの前線付近に向かう途中
大統領府のキリロ・ティモシェンコ副長官は、死亡したモナスティルスキー内相らについて、戦争の「ホットスポット」に向けて移動中だったと説明した。
北東部ハルキウ市の警察トップのウォロディミル・ティモシュコ氏によると、内相らはこの日、市内で同氏と会う予定だった。内相らと同氏は、前日に話をしたばかりだったという。
モナスティルスキー内相は、ゼレンスキー大統領の側近を最も長く務めてきた1人。内務省は戦時下で保安と警察運営を担っており、そのトップの死は、ウクライナ政府にとって大きな打撃となった。
内相の友人のマリア・メゼンツェワ議員は、「彼は同僚、友人、家族に対して年中無休で対応していた。ゼレンスキー大統領とは、選挙運動の初日からとても親しかった」とBBCに話した。
内相が死亡したことを受け、国家警察のイホル・クリメンコ長官が内相代行に就任した。