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BBC News

2023年1月20日

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ロンドン警視庁の警官が、17年間で女性12人に対して計49件の性的暴行を重ねたと法廷で認め、警視庁は謝罪した。ロンドン警視庁は過去10年間に行った警察職員による暴力についての内部調査を再点検し、全職員について再調査する方針を示した。

デイヴィッド・キャリック警官(48)は16日、ロンドン南部サザークの刑事法院で、強姦4件、不法監禁、性的暴行の5件について有罪を認めた。2003年の事件で、被害者は40代の女性という。ギャリック被告は昨年12月の時点で、すでに2000年以降の強姦20件を含む43件の罪状について、有罪を認めていた。2021年10月に強姦容疑などで逮捕され、職務停止処分を受けていた。

イギリスの警察では、銃を携帯する警官は特定の役職に限定されているが、被告は銃の携帯が認められる議会・外交使節警備担当の警官だった。

ロンドン警視庁は、過去10年間で、1071人の警官や警察職員が関係するとされる性的暴行や家庭内暴力の訴え1633件を調査してきたとして、この調査が適切だったか、調査もれはないか再点検し、全職員4万5000人を対象に再調査を実施すると方針を示した。

サー・マーク・ロウリー警視総監は、再調査を発表すると共に、キャリック被告の被害者に謝罪した。

「私たちは失敗した。申し訳ない。被告は警官になるべきではなかった」と警視総監は述べ、「この男は、ひどくおぞましい形で女性を虐待した。気分が悪くなるほどだ。私たちは女性や少女たちの期待に応えられず、さらにはロンドン市民の期待にもこたえられなかった」と謝罪。さらに「この男の暴力に苦しみ生き延びた女性たちは、想像を絶するほどの勇気をふるって、訴え出てくれた」と述べた。

「この影響で、ロンドン中の女性たちが、警察が自分の安全を守ってくれるのか疑うようになるのはわかる。私たちは日々、犯罪者を容赦なく取り締まるが、自分たちが正直で誠実かどうか、同じような厳しさで点検しなかった」と、警視総監は認めた。

首相官邸報道官は、キャリック警官のような事件で、警察に対する世間の信頼が「粉々に砕けて」しまうと述べた。一方、リシ・スーナク首相はロンドン警視庁とロウリー警視総監を信頼しているとして、「警視総監は、警察組織によるかなりの取り組みが必要だと認めている」と指摘した。

ロンドンのサディク・カーン市長は、キャリック被告の犯行に「愕然(がくぜん)としている」と述べ、「警官としての立場をこれほどとんでもない形でどうやって悪用できたのか、深刻な疑問があり、答えが必要だ」と述べた。

英・北アイルランド警察は18日、「性的あるいは家庭内の要素」を含む問題行動を理由に、警官9人を解雇したと明らかにした。さらに、現在74件について調査中で、性的な問題行動を理由に警官32人が職務停止中だという。

警官の立場悪用

キャリック警官は、2003年から2020年にかけて、12人の女性に対して犯行を重ねたことを認めている。犯行現場のほとんどが住んでいたロンドン近郊ハートフォードシャーでの犯行で、被害者の女性たちの服装や食事の内容、眠る場所などについて決定権を奪い、被害者が子供に連絡できないようにすることもあったという。

一連の犯行が発覚するきっかけとなったのは、2021年3月にロンドンで起きたサラ・エヴァラードさん誘拐殺人事件だった。この事件では、ロンドン警視庁のウェイン・カズンズ警官が、友人宅から自宅へ歩いていたエヴァラードさんを逮捕するふりをして誘拐し、強姦したうえで殺害し、遺体を遺棄した。

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カズンズ被告は同年9月に有罪となり、終身刑を言い渡された。キャリック被告の被害者がハートフォードシャー警察に通報したのは、それから間もない10月のことだった。

イギリス検察庁のジャスワント・ナルワル主任検事は、「市民を守る責任を託された立場にありながら、キャリックは17年以上にわたりその正反対のことをしていた」、「徹底的に女性を損ない、侮辱し、性的に暴行し、強姦した」と指摘。「時間がたつにつれて、おとがめなしで好きにできると思ったキャリックは大胆になり、犯行内容は深刻化していった」と述べた。

「キャリックは被害者をとことん痛めつけ、危害を加えた。これほどの犯行は、私の34年間の検事人生で初めてだ」とも、ナルワル氏は述べた。

キャリック被告は、被害者の一部とオンラインのデート・サイトで知り合い、議会や外交使節を警備する警官としての立場を利用して、女性たちの信頼を獲得したとされる。

被告は、不法監禁についても罪状を認めている。自宅の階段下にある小さい棚に、被害者を押し込んだこともあるという。

捜査を主導したハートフォードシャー警察のイアン・ムーア主任警部は、「犬のケージだって、あれより大きいものはある」と話した。

2021年10月に逮捕されたキャリック被告が昨年12月に、一部の罪状について初めて有罪を認めたのを受け、ロンドン警視庁は給料の支払いを停止。監察手続きを加速化させている。

エヴァラードさん殺害事件の後、ロンドン警視庁は女性保護対策を強化する姿勢を示し、市民の信頼回復のための「行動計画」を発表した。

しかし、政府の警察監査機関「警察行為独立事務所(IOPC)」によると、キャリック被告の犯行を未然に防ぐ機会を、警察は把握していなかったという。

政府の調査要求

英政府によるロンドン警視庁の組織内風土について第三者調査を担当しているルイーズ・ケイシー女男爵は、「被害者全員のためにも」徹底的な事実関係の調査をするよう、スエラ・ブラヴァマン内相に呼びかけた。

エヴァラードさん殺害事件について行われている別の第三者調査を拡大し、キャリック被告の事件も調査対象に含めるよう、ケイシー氏は求め、「2021年10月より前に、彼の行動パターンを特定し、警官の職を解き、究極的に犯行をやめさせる、その機会がロンドン警視庁をはじめ他の警察機関や組織になかったのか、調査するべきだ」と促した。

(英語記事 Met chief says 800 officers investigated over sexual and domestic abuse claims / Nine PSNI officers sacked over 'sexual or domestic' misconduct / Met Police officer David Carrick admits to being serial rapist

提供元:https://www.bbc.com/japanese/64327734


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