2023年2月8日(水)

BBC News

2023年1月20日

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アンドリュー・ハーディング、BBCニュース(ウクライナ・ソレダル近郊)

ウクライナ軍が、激戦の続いていた東部ソレダルからの「撤退」を認めた。ロシア軍は先週、ソレダルを占領したと主張していた。数カ月にわたって撤退を繰り返していた同軍にとって久しぶりの大きな勝利となった。

しかしBBCが取材したウクライナ兵士らは、計画されている反撃に備え、統制のとれた戦術的な動きとして引き下がったのだと述べている。

ソレダルと近隣のバフムートの間で前線となっている、作物の刈り取られた灰色の畑では、激しい銃撃と砲撃による戦いが続き、自動小銃の長い銃声が響いていた。

長身のウクライナ部隊指揮官アンドリイさんは、破壊されたコテージの陰から東部に広がる暗い木々を見据えながら、「敵はとても近い、1キロぐらいだ」と話した。

何が起きているか、確信を持つのは不可能だ。だが、頭上で鳴る自動小銃の銃声と、絶え間ないロケットや砲弾の爆発音が、ロシア歩兵部隊が近くにいることを示唆していた。我々に同行している第46独立空中強襲旅団の報道官によると、前線は常に変動しており、予測できず、1日に数キロ移動することもあるという。

がれきの中にうまく隠された司令部に入り込む直前、アンドリイさんは「状況は厳しい」と認めた。彼のチームは先ほど、自軍のドローンから、ロシアの装甲兵員輸送車(APC)の詳細な情報を受け取ったばかりだった。少ししてから、そのAPCを標的に、イギリスから供与された軽砲で3発が発射された。

「我々は毎日、敵を50~100人破壊している」と、アンドリイさんは話した。


ソレダルと周辺での戦闘は、この戦争が始まって以来最も激しいものとなった。ロシア軍は「ワグネル・グループ」の雇い兵と募集に応じた受刑者たちを先頭に、大きな損害を被ったものの、最終的にはこの丘の上の小さな町を占領した。ソレダルは今、攻撃を受けた建物とがれきばかりの荒れ地だ。

一部のウクライナ兵は内々に、異なる部隊の連携がうまくいかなかったことがソレダルでの敗北につながったとしている。その上で、ロシアが現在、ここの南に位置する、はるかに大きく戦略的重要性も高いバフムートを包囲する優位な立場にあると認めた。

しかし、ロシア軍から数百メートルしか離れていないパラスコウィウカ村などの前線にいるウクライナ部隊には、静かな自信が満ちている。ウクライナの怒りが込められた空爆や砲撃が、北側や南西側からバフムート近郊へ向かうロシアの動きを阻止しているようにみえる。

「これは制御された状況だ」とアンドリイさんは話す。

「私は司令官を信じている。時には(中略)反撃し敵を撃退するために、退いた方が良い場合も本当にある。我々は毎日、敵の陣地を破壊している」

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「いつ戻れるか?」

今週のある曇った朝、バフムートの北の端にある雪に覆われた田舎道は、軽い雪解けで泥道と化した。冬の間、木立や低木による貴重な目隠しがほとんどない中、多くの道が露出し、ウクライナ側の車両がロシアの砲撃にさらされた。

我々が小さなコテージに身を潜めていると、300メートルほど後方の道に砲弾が落下した。我々の同行者は、戦闘はさらに激しくなっていると話した。数秒ごとにロケット弾の爆発音や砲撃が聞こえる中、負傷兵を野戦病院へと運ぶウクライナの救急車両のサイレンが鳴り響いていると言った。

「銃で撃たれた傷も、砲弾の破片によるけがもある。ここでは特に激戦になっているようだ。それから凍傷やインフルエンザといった症状も起きている。そして人々は疲れている」と、第46独立空中強襲旅団衛生中隊のアンドリイ・ゾロブ医師は話した。

だが、兵士の士気はなお高いと言う。

「みんな疲れて、寒くて、けがをしている。それなのに『先生、いつ戻れますか?』と聞いてくる。誰も『けがをしたから休める』とは言いたくない。兵士たちの心はまだ燃えているし、私たちもするべき仕事がある」

ゾロブ医師は、兵士の肩から砲弾の破片を摘出する動画を見せながらそう語った。

バフムートに近づくと、頭上をウクライナのジェット機がうなりを上げて飛んで行った。地上では、目立たないよう隠された戦車や大砲がロシア軍への攻撃を続けていた。

(英語記事 'Sometimes it's better to step back, then crush the enemy'

提供元:https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-64342068


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