
ウクライナ東部で今月上旬、イギリス人ボランティア2人が行方不明になった。2人の家族は24日、両者がともに死亡したと公表した。
アンドリュー・バグショーさん(47)とクリストファー・パリーさん(28)は、今月6日にウクライナ東部ドネツク州ソレダルに向かう姿を目撃されたのを最後に、行方がわからなくなっていた。
2人はドネツク州でボランティア活動を行っていた。
バグショーさんの遺族によると、2人は高齢女性を救出しようとしていた時に、乗っていた車に砲弾が直撃したという。
パリーさんの遺族は、2人が「人道的な避難を試みていた」最中に死亡したと述べた。
ロシアの民間雇い兵組織「ワグネル・グループ」は、2人のうち1人の遺体が見つかったと主張していた。
激しい戦闘の焦点となっているソレダルをめぐっては、ロシア軍が13日に制圧したと主張していた。
パリーさんの遺族は
英外務省が発表した声明で、パリーさんの遺族のロブさん、クリスティンさん、ケイティさんは、「私たちの愛するクリッシー(パリーさんの愛称)が、ウクライナ東部ソレダルからの人道的避難を試みている最中に、同僚のアンドリュー・バグショー氏と共に死亡したことを、深い悲しみと共にお知らせしなければなりません」と書いた。
パリーさんは、コーンウォール地方トゥルーロ出身。遺族は、「現地で高齢者や若者、不利な立場にある人々を助けようという、彼の私心のない意志の強さを、私たち家族は心から誇りに思っています。クリスがこれほど充実した人生をこの先も送っていくはずだった中、別れを告げることになるとは、私たちは想像もしていませんでした。彼は思いやりのある息子であり、素晴らしい兄であり、本当にたくさんの人の親友であり、オルガにとっては愛するパートナーでした」と述べた。
「クリスは自信に満ち、外交的で冒険心のある青年で、あらゆる知り合いに対して誠実でした。ソフトウェア・エンジニアとして別の場所に住み、働いていましたが、コーンウォールは常に彼の帰る場所でした。ロッククライミング、サイクリング、ランニング、スカイダイビングが好きで、世界中を旅したがっていました」
「彼は(昨年)3月、ロシアの侵攻が始まった最も暗い時期にウクライナに引き寄せられ、最も支援を必要としている人々を助けたり、400人以上の命や放置された動物たちを救ったりしていました」
「彼がいなくなってどれほど寂しくなるか、言葉で表現することはできませんが、彼は永遠に私たちの心の中にいます」
「私たちの家族の一員になることを選んでくれたことを、とても幸運に思っています」
子どもたちを助けるため
パリーさんは今月2日、ウクライナ東部ドネツク州バフムトから、BBCラジオ・コーンウォールの取材に応じていた。
現地にとどまる動機について、特に子どもたちを助けたいからだとしていた。
「戦争で荒廃したこれらの地域から子どもたちを救い出すことは、私が想像する以上に価値のあることなのです」
また、「昨日は私の顔から10メートル以内の場所までドローンが迫ってきました。ここに来て一番怖かった出来事の1つでした」などと語った。
行方不明になる3日前の今月3日には、フリーランスのジャーナリストに対し、避難者を運ぶ運転手として活動していると話していた。
「複数の家族から親族を迎えに行ってほしいという依頼を受けています」
「多くのボランティアはもう行かないようだが、避難を希望している人たちがいるので私は喜んで行きます」
バグショーさんの遺族は
イギリス国籍の科学研究者バグショーさんはニュージーランドで暮らしていた。昨年4月からウクライナでボランティア活動を行っていた。
バグショーさんの両親スーさんとフィルさんによると、バグショーさんは食料や医薬品を届けたり、高齢者を助けたりしていた。
両親は報道機関を通じて発表された声明で、パリーさんとバグショーさんは「激しい軍事行動が行われている地域で、高齢女性をソレダルから救出しようとしていたところ、彼らの車に砲弾が命中した」とした。
「アンドリューは私心なく、多くの個人的なリスクを冒し、多くの命を救いました。私たちは彼を愛しているし、彼がしたことを本当に誇りに思っています」
また、「世界は強く、ウクライナと共に立ち上がり、ウクライナがいま必要としている軍事支援を提供し、終戦後の荒廃した国の再建を助ける必要がある」と付け加えた。
英外務省は渡航控えるよう警告
コーンウォール地方のトゥルーロ・ファルマス選出のチェリリン・マクロリー議員(保守党)は、「外務省が死亡を確認した、私の選挙区の有権者であるクリストファー・パリー氏のご遺族に、深い哀悼の意を表します」とツイートした。
「私の思いはいま、彼の遺族と共にあります。遺族は外務省職員から支援を受けていると聞いています」
英外務省は先に、「生命への真の危険」があるとして、ウクライナへの一切の渡航を控えるよう国民に警告していた。
ウクライナ国内にとどまっているイギリス人に対しては、安全が確認されたら直ちに退避するよう求めている。