
米フロリダ州のロン・デサンティス知事(44、共和党)は14日、ロシアによるウクライナ侵攻は「領土紛争」であり、アメリカの「重大な国益」ではないと発言した。これを受け、ウクライナ外務省報道官はデサンティス氏に、ウクライナを訪問するよう呼びかけた。
2024年の米大統領選への出馬が有力視されているデサンティス知事は、共和党候補と目される人物に対する米FOXニュースの質問に答えるかたちで、ウクライナ侵攻に言及した。
デサンティス氏はロシアによるウクライナ侵攻は「領土紛争」であり、アメリカよるウクライナ支援の継続は、同国の「重要な国益」には含まれないなどと述べた。
「アメリカには多くの重要な国益があるが(中略)ウクライナとロシアの領土紛争にこれ以上巻き込まれることは、その(国益)一つにはあたらない」
米政府にとってウクライナ支持は不可欠かどうか問われると、「不可欠ではない。欧州にとってはそうだが、アメリカにとってはそうではない」と述べた。
こうした発言は、デサンティス氏が大統領に就任した場合にウクライナへの援助を縮小する可能性があることを示唆している。
また、ジョー・バイデン政権の戦争への対応を批判している、共和党候補の筆頭格ともいえるドナルド・トランプ前大統領と足並みをそろえた格好となった。
ウクライナへ招待
ウクライナ外務省のオレグ・ニコレンコ報道官は、デサンティス氏の発言を批判し、ウクライナに招待するツイートを投稿した。
米海軍に所属していたデサンティス氏について、「我々は、戦闘地域に派遣された元軍人であるロン・デサンティス知事が、『紛争』と『戦争』の違いを知っていると確信している」と、ニコレンコ氏は述べた。
「ロシアによる全面的な侵略行為と、それがアメリカの国益にもたらす脅威についてより理解を深められるよう、彼(デサンティス氏)をウクライナに招待する」
デサンティス氏はハーヴァード大学で法律を学ぶ傍ら、米海軍の将校に任命され、海軍法務部に配属された経験を持つ。
グアンタナモ湾収容キャンプの収容者や、イラクに派遣された海軍特殊部隊の法律顧問を務めるなどした。
共和党内で分断
上院の共和党幹部を含む多くの共和党員は、ウクライナを守ることがアメリカにとって最善の利益であると、以前から述べている。
リンジー・グレアム上院議員(サウスカロライナ州選出)は、デサンティス氏の発言は同氏がウクライナの「状況について誤解」していることを示していると指摘した。
「これは領土問題ではなく、侵略戦争だ。それが問題ないと言うことは、戦争犯罪が問題ではないと言うのと同じだ」
マイク・ペンス前副大統領も、アメリカによる支援強化を呼びかけている。
一方で党内では、主に下院で、援助を継続するのをためらう声もある。
ケヴィン・マカーシー下院議長はウクライナを支持しているが、最近になって、アメリカの債務規模を考慮すると、ウクライナに「金額欄が空白の小切手」を渡すわけにはいかないと警告した。
議会では与野党の議員が、2022年だけで1120億ドル(約15兆円)以上のウクライナ支援を承認している。
ロイド・オースティン国防長官は15日、両党の幹部がアメリカによる支援の重要性に同意していることから、ウクライナに対する超党派の支援は今後も強固なままになると予想していると述べた。
「ウクライナ問題は重要だ。これはウクライナやアメリカだけでなく、世界の問題だ。これはルールに基づく国際秩序に関わることだ」
アメリカのウクライナへの拠出額は世界で最も多く、その内容は無人機や戦車、ミサイル、その他の兵器システム、訓練、後方支援、情報支援など多岐にわたる。
人道支援では、避難を余儀なくされたウクライナ人への食料支援、安全な飲料水や医療品、その他の必需品を提供している。アメリカの資金はウクライナ政府の運営を維持するために、公務員や医療従事者、教師らの給与支援にもあてられている。
(英語記事 Ukraine invites DeSantis after he calls war 'dispute')