2023年3月30日(木)

BBC News

2023年3月17日

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米軍は16日、黒海上空でロシア軍機と衝突し、墜落した米軍の無人航空機(ドローン)が撮影した動画を公開した。

米軍の大型ドローン「MQ9リーパー」は14日朝に墜落した。

アメリカは、ドローンのプロペラがロシアの戦闘機に接触して「飛行不能」になったため、損傷したドローンを墜落させたとしている。

ロシアは、同国軍の戦闘機「スホイ27」が米ドローンのプロペラと接触したことを否定している。しかし、米軍が公開した動画は、アメリカ側の見解を裏付けているように見える。

アメリカは当初、ドローンとロシア戦闘機の接近は30~40分ほど続いたとしていたが、公開された動画の長さは1分にも満たない。

アメリカのロイド・オースティン国防長官は15日夜、「我々はこれまで伝えてきた事実について、引き続き自信を持っている」と述べた。

オースティン氏は、国防総省がどのような動画が公開可能か検討しているとしていた。軍が動画を公開するには機密指定を解除する必要があるため、時間がかかるのはめずらしいことではない。

動画の内容

公開された編集済みの動画には、ロシア側が危険かつ無謀な行動を取っていたとするオースティン氏の主張を裏付けるような状況が映っていた。

米軍の偵察用ドローンの機体下部に取り付けられたカメラが撮影した動画では、ロシア軍の「スホイ27」戦闘機が燃料とみられるものを放出しながら、無人機に極めて接近して2度通過する様子が確認できる。

最初の通過では、無人機のカメラのレンズを汚しているように見える。2度目の通過ではさらに接近し、無人機からの映像送信を妨害している。

映像が戻ると、無人機の後方にあるプロペラの羽根が曲がっているのが確認できる。

米国家安全保障会議(NSC)のジョン・カービー戦略広報調整官は、 BBCがアメリカで提携するCBSに対し、ロシアの行動が意図的なものか偶発的なものかは明らかでないと述べた。

しかし、こうした動きは「完全に不適切なもので、安全ではなく、プロフェッショナルなものでもない」ため、意図的か否かは問題ではないとした。

カービー氏は、黒海上空での偵察飛行は継続されるが、パイロットを危険にさらすことになるため、軍による護衛は不要だと述べた。

ロシアは無人機が領空に接近と

ロシア側は、無人機が自国の領空に接近したと主張している。しかし動画に映っているのは海と空、そして雲だけだった。

ロシア政府は14日、ウクライナ侵攻の一環として、同地域に一方的な飛行禁止区域を設定したことを示唆していた。

ロシアのアナトリー・アントノフ駐米大使は、無人機が「特別軍事作戦のために設けられた暫定空域の境界を侵犯した」と述べた。

カービー氏は、同空域は国際空域であり、制限などされていないとした。

何があったのか

墜落の数時間後に出された声明の中で、アメリカは今回のドローンについて、ロシア戦闘機によって衝突されるまで数回にわたって燃料を浴びせられたと説明した。

米国防総省のパット・ライダー報道官は記者団に対し、無人機は「飛行不能かつ制御不能」に陥ったとし、衝突によってロシア機も損傷した可能性が高いと述べた。

ロシア国防省は、軍無人機は「急な方向転換」を行った後に墜落したと主張。また、トランスポンダーを切った状態で飛行していたとした。トランスポンダーは、機体追跡を可能にする通信装置。

ロシア政府は米軍が公開した動画について反応を示していない。ロシア安全保障会議のニコライ・パトルシェフ書記は15日、無人機の残骸を発見し回収する試みがなされていると述べた。

米メディアは、無人機が墜落した現場で16日、ロシアの船が目撃されたと報じた。

カービー氏は、アメリカも無人機の捜索を行っているが、ロシアが先に発見した場合、「有用な情報を活用するロシアの能力は大いに限定されるだろう」と強調した。

米軍制服組トップのマーク・ミリー統合参謀本部議長も、同様のメッセージを繰り返し発している。ミリー氏によると、アメリカは、墜落した無人機に価値のあるものが何も残っていないことを確実にするための措置を講じ、機密性の高いものをロシア側が回収できないようにしたという。

(英語記事 Video shows moment Russian jet hits US drone

提供元:https://www.bbc.com/japanese/64985260


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