
動画投稿アプリ「TikTok」をめぐり、米政府が中国の親会社に売却を求め、応じなければアメリカ国内での利用を禁止する可能性があると伝えていたことが明らかになった。
中国企業バイトダンスが所有するTikTokは、数百万人のユーザーからデータを収集し、国家安全保障上のリスクをもたらしていると非難されている。
TikTok側に対する所有者変更の要求は、米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が15日に最初に報じた。BBCニュースもTikTokに確認した。
同社は、強制的に売却させられたとしても、データの流れやアクセスは変わらないとしている。
ホワイトハウスは、BBCニュースのコメントの求めにまだ応じていない。
「売却で問題は解決しない」
TikTokをめぐっては、米当局が長年、データが中国政府に渡る恐れがあると懸念を示してきた。
WSJによると、ジョー・バイデン政権はバイトダンスに対し、TikTokを手放して、中国から明確に切り離すよう求めている。
同紙はまた、国家安全保障に関わるリスクを管理する立場の対米外国投資委員会(CFIUS)が、バイトダンスにTikTokを売却するよう全会一致で勧告したと報じた。
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TikTokの広報は、WSJの報道内容に異論はないとし、CFIUSから連絡があったことを認めた。
しかし、記事は誇張されているとし、「売却」が実際に何を意味するのか明らかではないと述べ、次のように続けた。
「国家安全保障を守るのが目的なら、売却で問題は解決しない。所有者の変更は、データの流れやアクセスに新たな制限をもたらさない」
「国家安全保障に関する懸念への最善の対処法は、アメリカのユーザーのデータとシステムを、アメリカを拠点に透明性をもって保護することだ」
膨大な個人データが渡る恐れ
アメリカでのTikTokの利用禁止は、2020年に当時のドナルド・トランプ政権が初めて提起した。
続くバイデン政権も、TikTokに懐疑的な目を向けてきた。
TikTokは、インスタグラムやツイッターと同様、ユーザーに関する膨大なデータを収集する。
ユーザーの生体情報も取得でき、位置情報へのアクセスも可能だ。そうした情報が、中国政府に渡ることが懸念されている。
TikTokは、アメリカにあるすべてのデータをアメリカに移す、「プロジェクト・テキサス」と呼ぶ取り組みを進めてきたとしている。
同社は、この計画をまだ進める予定だとBBCニュースに話した。
TikTokのトップが米議会で証言へ
米議会上院では先週、TikTokの全国的な禁止を可能にする、大統領権限の拡大に関する新たな法案が出された。
この「制限法案」は、外国とつながりのある企業について、米商務省が国家安全保障上のリスクだと判定できるようにする内容。
TikTokはアメリカ、カナダ、欧州連合(EU)で、政府関係者が公用の携帯電話で使うことが禁止されている。
イギリスでは閣僚らがセキュリティー上の理由から、TikTokを公用の携帯電話や端末で使用するのを禁じられた。
TikTok最高経営責任者(CEO)の周受資氏は来週、米議会での証言が予定されている。対立的なやりとりが繰り広げられるとみられている。