2023年3月23日(木)

BBC News

2023年3月18日

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スティーヴ・ローゼンバーグ(モスクワ)、スティーヴン・マクドネル(北京)、ジェイムズ・ランデイル(キーウ)

中国とロシアの両政府は17日、中国の習近平国家主席が20~22日、モスクワを訪れて、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領と会談すると発表した。

ロシア政府は、両首脳が「包括的なパートナーシップと戦略的協力」を話し合うと説明した。

昨年2月にロシアのウクライナ侵攻が始まって以来、習主席がロシアを訪れるのは初めて。20日にプーチン氏と昼食を共にするほか、21日に首脳会談に臨む予定という。

中国外交部の報道官は、中国がウクライナでの戦争について「客観的で公平な立場」を維持すると説明。さらに「和平協議推進へ建設的な役割を果たす」つもりだとも述べた。

ロシアによるウクライナ侵攻に関して、中国政府はこのところ停戦案を提示しているものの、西側諸国からはあまり歓迎されていない。西側はかねて中国に対して、ロシアに武器を提供しないよう強く働きかけている。

リシー・スーナク英首相の報道官は、ウクライナの主権回復のために中国が本当に役割を果たすなら、イギリスはそれを歓迎すると述べた。

習主席のモスクワ訪問は、中国による強いロシア支持の姿勢を示す。両首脳はかねて共に多極化世界を推進する世界観を共有してきた。昨年の侵攻開始前に会談した両氏は、両国の連携関係は無限だと強調した。それは厳密には真実ではなく、中国はこれまでのところ殺傷力の高い兵器をロシアに提供していない。これについてアメリカ政府は、中国が検討中だとくぎを刺して懸念を示している。

中国とロシアの経済連携については、ロシアの経済規模は中国の1割に過ぎないため、ロシアは二番手の関係に甘んじつつある。この側面からも、中国がロシアに対して影響力を持つのは間違いない。

中国が今回の首脳会談について「中立」を強調し、ロシアとウクライナ両政府の間で、純粋に第三者的な仲介役を務めるのかという憶測もことさらに否定していないことも、注目を集めている。

両首脳が食事を共にする3月20日は、両国が反対したアメリカのイラク侵攻20周年でもあり、これは偶然ではないのかもしれない。

中国は今月、すでにサウジアラビアとイランの外交関係正常化で仲介役を果たし、外交成果を上げている。

他方で、中国が中立を主張するのは見せかけだけで、ウクライナ侵攻の継続が中国の地政学的利益につながるのだという指摘もある。ロシアを矢面に立たせて西側と戦わせ、西側の資源や資金を失わせるため、ロシアに手を汚させているのだという解釈にもとづく指摘だ。

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中国は12項目の和平案で、停戦協議や国家主権の尊重を呼び掛けた。しかし、ロシアがウクライナから自軍を撤退させなければならないとは明記されていない。また、ロシアに対する「一方的な制裁」の使用を非難する内容が含まれており、ウクライナに協力する西側諸国を暗に批判しているとみられる。

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は2月24日、中国提案について協議するため、習近平国家主席との会談を計画していると記者会見で述べた。

侵攻開始1年を機に、内外の記者を大勢招き、その質問に2時間以上にわたり原稿なしで次々と答え続けたゼレンスキー氏は、中国の和平案について質問され、平和実現の方法探しに中国がかかわっていることの表れだろうと述べた。

その上で、「中国がロシアに兵器を提供したりしないと、本当に信じたい」と話していた。

アメリカの一部メディアは、習主席がモスクワ訪問後にゼレンスキー氏と電話会談する予定だと伝えているが、確認はされていない。

ウクライナ政府はこれまで、中国と何らかの形で協議する機会を強く求めてきた。習主席のモスクワ訪問は、ロシアには今なお同盟国がいるのだと世界に示すためのものだと、ウクライナ政府は受け止めている。

習主席の訪ロ発表前にBBCのインタビューに応じたウクライナのドミトロ・クレバ外相は、「ロシアに武器提供する段階に中国はまだ達していないと思う。同時に、この訪問が和平をもたらすとも思わない(中略)モスクワ訪問そのものが合図になるが、それがただちに結果につながるとは思わない」と述べた。

外相が意味する「合図」とは、「あまり調子の良くないロシアの指導者のもとへ中国の指導者が訪れるほど、中国とロシアは親密なのだと示す」ものだと、クレバ氏は話した。

「それは世界全体のメッセージだと思う。西側への、そしてとりわけ、西側以外の国へのメッセージだと思う。ロシアは孤立していない、中国がロシアと話をしているのだと、西側ではない国々に合図するためのものだ」

アメリカ政府は、習主席とゼレンスキー大統領の接触を強く後押ししている。米国家安全保障会議(NSC)のジョン・カービー戦略広報調整官は、「2人が話をするのはとても良いことだ」と述べている。

16日には中国の秦剛外相がウクライナのクレバ外相と電話会談し、ウクライナとロシアが和平協議をできるだけ早く再開することを強く促した。この電話会談についてクレバ氏は、「領土的一体性の重要性」を外相同士で話し合ったのだと説明した。

(英語記事 China's Xi to meet Putin in Moscow next week

提供元:https://www.bbc.com/japanese/64998175


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