
アメリカのドナルド・トランプ前大統領(76)は18日、自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」で、21日に逮捕される見通しだと書き込み、大規模な抗議行動に出るよう支持者に呼びかけた。
トランプ氏は、マンハッタン地区検事局の「違法な情報リーク」によって、自身が21日に逮捕されることが「示唆」されていると投稿した。
同氏の弁護士スーザン・ネシェレス氏は、捜査機関から連絡を受けておらず、同氏の投稿はメディア報道に基づくものだと説明した。
「これは政治的な起訴なので、地区検事局は通常の事件のようにトランプ大統領の弁護士に連絡せず、すべてをマスコミにリークしている」と述べた。
マンハッタン地区検事局はコメントを出していない。
検察当局は、トランプ氏が2016年大統領選の前に、人気ポルノ俳優のストーミー・ダニエルズ氏に対して自身の弁護士マイケル・コーエン氏が口止め料13万ドルを支払ったとされる事案をめぐって、トランプ氏の起訴が可能か検討している。
トランプ氏からコーエン氏への払い戻しは、記録では「弁護士費用」とされおり、検察はこれがニューヨーク州で軽犯罪にあたる記録の改ざんに相当すると判断する可能性がある。
米メディアによると、ニューヨークの司法当局は、早ければ来週にもトランプ氏を起訴し、マンハッタンの法廷に出廷させる準備を進めている。出廷が現実的か、警備面などで検討しているという。
トランプ氏はこの他にもいくつかの事案で捜査されているが、起訴に至ったものはない。同氏は不正行為を否定している。
もし起訴されれば、米大統領経験者が初めて刑事裁判の被告となる。
トランプ氏は、たとえ起訴されても、来年の大統領選の共和党候補を目指して活動し続けると宣言している。
同氏は2度の弾劾裁判や、2016年大統領選にロシアが干渉したとされる疑惑、機密文書を私邸兼リゾート施設「マール・ア・ラーゴ」で不適切に取り扱った疑い、2020年大統領選の結果を損なおうとする取り組み(2021年1月6日の連邦議会議事堂襲撃を含む)などで、これまでも捜査の対象とされてきた。
そのたび、同氏の人気は支持層の中で高まる傾向が見られている。今回も起訴されれば、同様の効果が生じる可能性がある。
トランプ氏は忠実な支持層をもっている。2021年の連邦議会議事堂襲撃は、同氏の抗議の呼びかけを受けて支持者らが行動したもので、緊迫した状況が短時間で暴力へと深刻化することを示した。
下院議長が検察を非難
米下院のケヴィン・マカーシー議長(共和党)は、今回の捜査を「過激なDA(地区検事)によるとんでもない権力の乱用」とツイッターで非難した。
また、「政治的動機に基づく訴追」のために、連邦政府の資金が選挙妨害目的で使われていないか調べるとした。
トランプ氏の疑惑をめぐっては今後、大陪審が調べを終えて、刑事訴追を勧告するか投票で決める。ただ、決定に拘束力はなく、マンハッタン地区検事アルヴィン・ブラッグ氏が起訴するか判断する。その判断の期限は設定されておらず、政治的な色彩が濃い場合もある。
アメリカで大統領経験者の起訴は前例がない。トランプ氏の弁護士は、同氏が通常の手続きに従うとしている。
起訴されると通常、被告は逮捕されるか当局に出頭する。重罪の場合は手錠をかけられる。罪状認否の最初の審理の後、ホワイトカラー犯罪の被告は通常、次の公判まで保釈される。