
ロシア国営メディアは19日、ウラジーミル・プーチン大統領がウクライナ南東部の港町マリウポリを訪れたと伝えた。マリウポリは昨年、ロシア軍の徹底攻撃で破壊され、昨年5月に制圧された。事実ならば、ロシア軍が昨年2月以降に占領したウクライナの土地をプーチン氏が初めて訪れたことになる。
国営タス通信によると、プーチン氏はヘリコプターでマリウポリへ移動し、現地の人たちと会談した。
ロシア国営メディアが伝えた公式動画には、プーチン氏が夜に車を運転して市内を移動した後、コンサートホールを訪れる様子が映っている。BBCはプーチン氏がいたとされる場所を検証できていない。
動画では、ロシアのマラト・フスヌリン副首相が車に同乗し、マリウポリ復興の取り組みについて説明している。
プーチン氏はさらに、市内のフィルハーモニー・ホールを訪れた様子。ここでは、昨年5月のマリウポリ陥落の際、アゾフスタリ製鉄所に立てこもり最後まで抗戦したウクライナ兵たちの裁判が夏にかけて行われた。マリウポリの東にあるロシアのロストフ・ナ・ドヌ市も訪れ、ロシア軍幹部と会談したとも伝えられている。
プーチン氏は18日の日中には、ロシア軍による併合9年を記念して、黒海に面するクリミア半島のセヴァストポリを訪問。国営メディアによると、新しいロシア美術学校や新生ロシア博物館などを視察した。
ウクライナ政府は、クリミア半島を含めてロシアが占領したすべての領土を奪還すると主張し続けている。
港湾都市で巨大製鉄所などのある工業拠点でもあったマリウポリは、昨年5月にロシアが完全掌握を宣言して以来、ロシア支配下にある。マリウポリ攻防戦は昨年2月24日の侵攻開始以来、最も激しい戦いの一つで、ウクライナ政府は2万人以上が殺害されたとしている。
国連の分析によると、マリウポリ市内にあった建物の9割が破壊され、開戦前の人口約50万人のうち約35万人が避難を強いられた。
ロシアが復興事業を推進か
現地住民のグループはBBCに対して、今ではロシアが大規模な市内復興事業に取り組み、住民の支持を取り付けようとしていると話した。マリウポリをロシアの一部に融合させるのが目的という。
ロシア当局によると、今では約30万人が市内に住んでいる。
昨年3月にはロシア軍が、マリウポリ住民の避難所となっていた劇場をミサイル攻撃した。建物は崩壊し、少なくとも300人が死亡したとみられている。
ウクライナ政府や複数の人権団体は、この劇場攻撃は戦争犯罪に相当すると非難している。
国連は、プーチン大統領とその政権が国際法違反に問われる可能性がある複数の事案のひとつに、このマリウポリ劇場攻撃を含めている。
オランダ・ハーグに本部を置く国際刑事裁判所(ICC)は17日、ロシアが占領したウクライナの地域から子どもたちをロシアへと不法に移送しているとして、戦争犯罪の容疑でプーチン大統領らに逮捕状を出した。これを受けて、ICC加盟123カ国にプーチン氏が入国した場合、その時点で逮捕される可能性がある。
(英語記事 Ukraine war: Putin pays visit to war-damaged Mariupol, state media reports)