
ホリー・ホンデリッチ、BBCニュース(米ワシントン)
米フロリダ州のロン・デサンティス知事(44)が24日、来年の大統領選の共和党候補指名争いへの立候補を表明した。ツイッターを所有する起業家イーロン・マスク氏との対話形式で明らかにした。
両者は、音声でリアルタイムの対話ができるツイッターの「スペース」で対談した。
当初は午後6時(日本時間25日午前7時)開始の予定だったが、デサンティス氏が一言も発しないうちに対談は打ち切られた。
技術的な不具合が続き、約20分後に始まった。
デサンティス氏は、「私は偉大なアメリカの復活を導くため、米大統領選に立候補する」と表明した。
同氏は共和党候補指名争いで、ドナルド・トランプ前大統領の主なライバルと目されている。
米世論調査では、トランプ氏が30ポイント以上の差をつけて党内でリードしているとされるが、同氏の追い落としを狙う人たちが次々と名乗りを上げている。
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この夜、対談が本格化する前に、何十万人ものツイッターのユーザーがツイッターを離れた。ツイッターでは、マスク氏がトップに就任した昨年10月以降、サイトの運営や技術的トラブルの解決を担当するエンジニアなど従業員数千人が解雇されている。
デサンティス氏のチームは、技術的な不具合をカバーしようと素早く行動。ツイッターに「(立候補表明で)ものすごく興奮が高まりインターネットが壊れた」と書き込み、選挙運動サイトへのリンクを張った。広報担当のブライアン・グリフィン氏は、この夜のオンラインイベントでは1時間のうちに100万ドル(約1億4000万円)の寄付が集まったとした。
ロイター通信によると、対談を聴いた人は60万人を超えた時間帯もあったが、終了時は30万人未満だった。先月のBBCのマスク氏へのインタビューでは、300万人以上がツイッターのスペースで耳を傾けた。
対談では、デサンティス氏はすぐに自らの保守的な信条に話題を変えるとともに、フロリダ州における新型コロナウイルスの危機対応を自賛した。同州はロックダウンに反対の姿勢を取り、多くの共和党員がそれをたたえた。
デサンティス氏はその後、米FOXニュースで、より具体的な公約の概要を説明。大統領就任の初日に、南部国境地帯の緊急事態を宣言するなどとした。また、ドナルド・トランプ前大統領(共和党)が任命したクリストファー・レイ連邦捜査局(FBI)長官を解任し、ジョー・バイデン大統領(民主党)の「反米エネルギー政策」を廃止するとした。
デサンティス氏はこの日、会談に先立ち、連邦選挙委員会に立候補を届け出た。その後、立候補表明の紋切り型の動画を公開した。
その中でデサンティス氏は、「国境は悲惨な状況で、都市では犯罪がはびこっている。(中略)大統領はもがき苦しんでいる」と主張。「だが、衰退は選択であり、成功は実現可能だ。そして、自由は戦うだけの価値がある」と述べた。
トランプ氏がデサンティス氏に向けて
トランプ氏と選挙運動チームは、しばらく前から予測されていたデサンティス氏の立候補表明を受け、大量のメールを送信するとともに、トランプ氏が作ったソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」に続々と投稿した。
対談でデサンティス氏が、大統領の権限に関して、「どんなボタンを押せるか」憲法を研究するとマスク氏に述べた際には、トランプ氏はデサンティス氏に向けて声明を発表。
「ロブ、私の『赤いボタン』は大きく、優れていて、強い。そして機能している(真実だ!)、あなたのはそうではない!(もうすぐ私の友人になる北朝鮮の金正恩=キム・ジョンウン総書記=との会話によればだ!)」とした。
調査会社「モーニング・コンサルト」が先週発表した調査では、デサンティス氏は首位のトランプ氏に38ポイントもの差をつけられ2位となっている。
共和党の有権者は、来年初めに始まる長期の予備選を通じて、2024年11月の大統領選で現職のバイデン氏と対決する党候補者を決定する。
デサンティス氏はどんな人
デサンティス氏は、米政界では比較的新参者だ。2012年に下院議員に初当選し、上院議員選での敗退を経て、2018年にフロリダ州知事に選ばれた。
銃所有を容易にする州法や、学校で性や性同一性に関する教育を制限したり、中絶をしにくくしたりする州法など、注目を集めた法律が制定されるのを監督してきた。そして、「フロリダの青写真」は連邦政府の政策の指針にもなるとし、アメリカを保守的な方向へと大きく旋回させるものだと訴えてきた。
フロリダ州議会では先に、デサンティス氏が大統領選に立候補するために知事を辞める必要がないと認める法案が可決された。
デサンティス氏の軍資金は豊富だ。先月末の時点で、大統領選の運動に充てることができる、前回州知事選の余剰金が8800万ドル(約123億円)あった。
また、独立委員会が管理する資金が約3000万ドルあるとされる。デサンティス氏の支持者らは、これを同氏の選挙運動の支援に使うことができる。
一方、トランプ氏は、2023年に入って最初の3カ月で 1880万ドルの資金を調達したと報告している。
デサンティス氏は選挙対策本部長に、最側近のジェネラ・ペック氏を起用するとみられている。ペック氏は、デサンティス氏が再選を目指した2022年の知事選で日々の選挙運動を指揮し、約20ポイント差の大勝へと導いた。
AP通信やニューヨーク・タイムズによると、少なくとも18州でデサンティス陣営のスタッフの採用が進められているという。