
ロシアの雇い兵組織「ワグネル」の代表は25日、同部隊がウクライナ東部バフムートからの撤退を開始したと発表した。
ワグネル創設者のエフゲニー・プリゴジン氏は先に、6月1日までにバフムート市にロシア軍に引き渡すと表明。一方、ウクライナは同市の一部をまだ掌握しているとしている。
プリゴジン氏は25日、バフムート市内で撮影された動画をメッセージアプリ「テレグラム」に投稿。「我々はきょう、バフムートから撤退する」と述べた。
BBCヴェリファイ(検証チーム)は、この動画がバフムート東部の薬局の近くで撮影されたことを特定した。
プリゴジン氏は動画の中で、ロシア軍のために銃弾を残しておくよう戦闘員に指示している。また、ロシア軍を補助するために一部の戦闘員を残すつもりだと付け加えた。
「ロシア軍が難しい状況に置かれた場合は、我々は立ち上がるだろう」とプリゴジン氏は述べたあと、2人の戦闘員に「ロシア軍をいじめないよう」警告した。
プリゴジン氏はロシア軍幹部について繰り返し、ワグネルを支援していないと公然と批判してきた。先月には、必要な弾薬が提供されないなら部隊を撤退させると脅した。
こうした中、ウクライナは同市の陥落を認めていない。
ウクライナのハンナ・マリャル国防次官は25日、自軍が依然として南西部リタク地区の一部を支配していると述べた。マリャル氏はテレグラムへの投稿で、「敵は郊外のワグネル部隊を正規軍の部隊に置き換えている。町の内部では、ワグネル部隊がまだ存在している」と説明した。
バフムート攻防戦はこの戦争で最長の戦いとなり、最多の犠牲者を出している。
アナリストらは、バフムートにはロシアにとって戦略的な価値がほとんどないと指摘する。ただ、今回の戦争で最長の戦いになっているだけに、制圧すれば象徴的な勝利になるとみている。
ワグネルは数カ月にわたりバフムートに戦力を集中してきた。戦闘員を絶えず送り込み続ける消耗戦術によって、ウクライナの抵抗を徐々に削いでいった様子。
プリゴジン氏は、2022年2月のロシアのウクライナ侵攻開始に伴い、雇い兵組織を指揮者として頭角を現した。
ワグネルはロシア国内の刑務所で、罪の重さに関わらず、ウクライナでワグネルのために闘うことを条件に、数千人の受刑者を雇い入れた。
アメリカは今月、ウクライナでの戦争でロシア兵が2万人以上死亡し、8万人が負傷したとの見方を示した。BBCはこれらの人数を独自に検証できていない。
ウクライナはバフムートでの犠牲者の数を発表していないが、同様に大きな被害を受けている。
ロシアはバフムートを制圧すれば、ドネツク州全域の支配という目標に少し近づくことになる。ドネツク州は、昨年9月にロシアが併合を宣言したウクライナ東部と南部の4州の一つ。併合が宣言される前には、それらの州で住民投票が開かれたが、ロシア以外の国は不正だと非難した。
ロシアによる侵攻前、バフムートには約7万人が暮らしていたが、現在は数千人しか残っていない。かつては塩、石こう鉱山、ワイン醸造などで有名だった。