
2012年米大統領選の共和党候補だったミット・ロムニー上院議員(76)は13日、来年秋の上院選で再選を目指すつもりはないと発表した。さらに、来年11月の大統領選を目指すジョー・バイデン大統領(80)とドナルド・トランプ前大統領(77)に対して、次世代の政治家に「譲る」よう呼びかけた。大統領の任期は4年。上院議員は6年。
ロムニー氏は2025年1月の任期満了をもって、政界を引退すると発表。もし来年再選されれば、「新たな任期を終える時に自分は80代半ばになっている。正直言って、新しい世代のリーダーが必要な時だ」と述べた。「再選は目指さないが、闘いから引退するわけではない」とも強調した。
BBCの質問に対してロムニー氏は、バイデン大統領とトランプ前大統領が2人とも来年の大統領選に出馬せず、その代わりに両党が「次世代のだれか」を選べるようになれば、「素晴らしいことだ」と答えた。
ロムニー氏はさらに記者団に対して、若者が共和党に参加し、共和党から出馬したり共和党に投票したりするよう働きかける活動をするつもりだとして、共和党と民主党のどちらも、若い世代から候補者を立てたほうが党の「ためになる」と話した。
ロムニー氏はまた、自分は共和党の中でも政策実現を目指す「賢明な少数派」なのだとして、大多数との共和党議員とは異なるのだと示唆。トランプ前大統領を支持する共和党議員たちは、民主党への「仕返し」や「意趣返し」を最優先しているのだと批判した。
マサチューセッツ州知事(2003~2007年)を経て2012年大統領選の共和党候補となったロムニー氏は、再選を目指したバラク・オバマ大統領(当時)に敗れた。2018年の連邦上院選で共和党候補としてユタ州から出馬し、当選した。
2016年大統領選でトランプ氏が納税記録を公表しなかったことを批判したほか、トランプ政権発足後も、メキシコ国境の壁建設をめぐる大統領の国家非常事態宣言を無効にする議決では共和党に造反した。トランプ氏が2019年7月に、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領に電話をして、軍事援助の凍結解除をちらつかせながら、バイデン親子を捜査するよう働きかけたことについては、2020年の弾劾裁判で共和党からロムニー議員のみが有罪を支持した。
2021年1月6日の連邦議会襲撃を受けて、トランプ大統領(当時)が反乱を扇動したとして下院が大統領の弾劾訴追を決議した際にも、ロムニー議員は有罪を支持した。上院でのこの弾劾裁判では共和党議員7人を含む、57人の上院議員が有罪を支持したものの、必要な3分の2以上の67票には達しなかった。
こうしたことから、トランプ前大統領はロムニー議員を敵視してきた。議員が政界引退の予定を発表すると、前大統領は自らのソーシャルメディアで「素晴らしい知らせ」だと歓迎。全文大文字で強調しながら、ロムニー議員の「業績は優れたものではなかった」と批判した。
ロムニー氏が出馬を見送ることで、代わりとなる共和党候補にはトランプ前大統領の支持者が選ばれ、そのまま当選する可能性がきわめて高い。ユタ州に割り振られた連邦上院議員の2議席は1977年以降、常に共和党が独占してきた。
(英語記事 Senator Mitt Romney urges Biden and Trump to 'stand aside' for 2024)