2023年10月4日(水)

BBC News

2023年9月15日

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北アフリカのモロッコ中部で8日夜に発生した強い地震は、14日までに約3000人の死亡が確認され、負傷者は5000人を超えている。山岳地帯の被災した村をBBCのトム・ベイトマン記者が取材した。


BBC取材班は13日、高アトラス山脈のふもとにあるモロッコの町アミズミズで、イギリスの国際捜索救助チーム(ISAR)を見つけた。60人超の同チームは、アミズミズに設置したベースキャンプを出発する準備を進めていた。

私たちは同行取材を始めた。

救助隊員らを乗せたモロッコ軍の車両2台に続いて、私たちは車で震源地に向かった。道中、比較的無傷に見える村があった一方で、建物が倒れたりひび割れしたりしている村も目にした。所々で急ごしらえのテントが道路沿いに並んでいた。

30キロメートルの道のりを5時間近くかけて移動し、山岳地帯の村ドウズルーに到着した。救助隊が生存者の捜索を進める。やがて、その惨状が明らかになってきた。

私は圧倒された。ほとんどすべてのものが破壊されていた。その中で、人々は生き延びるのに懸命だった。

住民らによると、人口約1000人のこの村で、100人以上が死亡した。

生き残った人々はショックで疲れ果てている。それでも、安全を確保し、家族を飢えさせない方法を見つけなければならない。

がれきの奥深くで、フセインさんという男性が家族の所有物を探していた。がれきの中には木製の玄関ドアが立った状態で残っていて、そこに彼の家があったことを唯一示していた。

「家族とここで夕食を食べていた。すると天井が落ちてきた。きょうだいは死んだ。神が決めたことだ」とフセインは話した。

「いま私は何もできない。服を取り出してテントに行くだけだ」。フセインさんはそう言うと、つるはしで石や土を動かした。

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丘の中腹を数メートル登ったところでは、フセインさんの妻や家族が手作りのテントで暮らしていた。毛布が山積みになっていた。夜の冷え込みから体を守るためのものだった。

私は原形をとどめた数少ない建物の一つを見つけ、歩いていった。そこには多くの村人が集まっていた。ボランティアらから提供された衣料品が配られていた。

外の世界から隔絶されたこの村の住民たちは、もっと多くの物資が必要だと訴える。

ファトゥーマさんは「全身が震えている」と私に言った。彼女は今、毛布と木で作ったテントで暮らしている。テントから見下ろすと、地震で倒れずに残った、モスク(イスラム寺院)のピンク色の尖塔が見える。村のモスクのその塔が、今やこの村の唯一の希望の光だ。

「神が私たちを守ってくれますように」とファトゥーマさんは言った。「私たちは生き残るために戦っている。ゆっくりと」

探知犬が反応せず

がれきの中では、私が同行した英救助隊ISARの探知犬「コリン」が歩き回っていた。においで生存者を探し当てるよう訓練された、ボーダーコリー犬だ。

しかし、この村で新たな生存者を発見できる望みはほぼないと、住民たちは話した。

ほとんどの家は倒壊した。大きな石や泥れんが、木材などが広い範囲に散乱している。

そうした昔ながらの素材は、建物が倒壊した際、人が生き残れるような空間を生む可能性が少ないと、専門家は言う。


英ISARの隊員らは、村の長老と話をすると、探知犬と共にがれきの山を離れた。

隊員のニール・ウッドマンジーさんは、「コリンは経験豊富な犬だ。今年はトルコにも行っている」と話した。「トルコ」とは、2月に同国南部およびシリア北部で発生し、約6万人が死亡した大地震の被災地のことだ。

「コリンは生き物のにおいにだけ反応する。(ここには)何のきざしもない。(中略)残念ながら、この地域には生存しているけが人はいないようだ」

今回の地震では、国際的な捜索隊への注目が高まっている。

対応の遅れが批判されているモロッコ政府は10日、外国の支援はスペイン、イギリス、カタール、アラブ首長国連邦(UAE)の4カ国からしか受け入れないと決定し、物議を醸した。

政府は、「(支援側の)協調の欠如は逆効果を招きかねない」として、決定は正しいと主張した。

(英語記事 Quake turns Moroccan village to field of boulders

提供元:https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-66816542


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