
ウクライナは18日、同国産農産物の輸入を独自に禁止したスロヴァキア、ポーランド、ハンガリーの3カ国を、世界貿易機関(WTO)に提訴した。輸入禁止措置は欧州連合(EU)の国際義務に違反するとしている。
スロヴァキア、ポーランド、ハンガリーの3カ国は、自国農家を安価な輸入品から守るため、輸入禁止措置が必要だと主張している。
昨年にロシアがウクライナへの全面侵攻を開始したことで、黒海経由の主な輸出航路はほぼ閉ざされている。ウクライナは陸路での代替輸送を余儀なくされている。
その結果、大量の穀物が中央ヨーロッパに入るようになった。
3カ国の農家は以来、ウクライナ産穀物の輸入は自分たちの価値を低下させ、国内の市場をゆがめていると訴える抗議集会を開いている。
こうした圧力を受け、EU加盟27カ国は今年初め、ハンガリー、ポーランド、スロヴァキア、ブルガリア、ルーマニアがウクライナ産農産物の輸入を9月15日まで制限することを認めることで合意した。
その期限を迎えた15日、EU政策執行機関の欧州委員会は、この措置を延長しないと決定した。
これに反発するスロヴァキア、ポーランド、ハンガリーは、16日以降も独自に輸入を禁止すると発表した。
ポーランドとスロヴァキアはウクライナにとって、ロシアとの戦いにおける重要な同盟国。
「個々の加盟国は輸入を禁止できないと証明する」
ウクライナのユリヤ・スヴィリデンコ経済発展・貿易相は18日に声明で、「(EUの)個々の加盟国がウクライナ製品の輸入を禁止できないと証明することが非常に重要だ」と述べた。
「そのため、(スロヴァキア、ポーランド、ハンガリーについて)WTOに提訴した」
そして、ウクライナの輸出業者は「すでに苦しんでおり」、一方的な輸入禁止措置のために「大きな損失を被り続けている」と付け加えた。
ポーランドは輸入禁止を維持するとしている。
「我々は自分たちの立場を維持する。この措置は、経済分析のほか、EU法と国際法を根拠とする権利にのっとった、正しい措置だと考えている」と、ポーランド政府のピョートル・ミューラー報道官は述べた。
「WTOに提訴しても、我々は動じない」とも、報道官は話した。
<関連記事>
- 小麦価格が上昇、ロシアがウクライナ産穀物輸送船を軍事標的にすると脅し
- ウクライナ港湾都市をロシアが攻撃、穀物6万トンが被害 輸出協定の失効翌日
- ウクライナ産農産物の輸出協定、 ロシア延長せず失効
- ポーランドとハンガリー、ウクライナ産穀物を禁輸 EUは容認せず
欧州委員会はかねて、EUの通商政策を決定するのは個々の加盟国ではないと、繰り返している。
ポーランド、ハンガリー、スロヴァキアは、自国への輸入を禁止する一方で、ウクライナ産の穀物が自国を経由して他の市場に入ることは認めている。
世界有数の農産物輸出国
ウクライナはヒマワリ油や小麦、大麦、トウモロコシといった農産物の世界有数の輸出国。
ロシアによる全面侵攻を受け、ウクライナの黒海沿岸の港は封鎖され、輸出用の約2000万トンの穀物が足止めされた。
そのため世界の食料価格は高騰し、中東やアフリカの諸国が食料不足に直面する恐れがあった。
ロシアとウクライナは昨年7月、黒海に面したウクライナの港から農産物の輸出再開を可能にするため、個別の合意文書にそれぞれ署名した。
国連食糧農業機関(FAO)によると、これによってウクライナから約3300万トンの穀物が出荷され、世界の食料価格が約20%下落した。
ところが、今年7月にロシアがウクライナ産穀物を黒海経由で輸出する国際協定を延長せず、世界の穀物価格は再び上昇した。