
ロンドン警視庁のサー・マーク・ロウリー警視総監は29日、イギリス政府に対し、過激主義の定義を明確にするよう求めた。ロウリー警視総監はこのところ、ロンドンで開催されたパレスチナを支持する集会の取り締まりについて批判されている。
パレスチナ自治区ガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスは10月7日にイスラエルを襲撃。約1400人が殺害され、約230人が人質として連れ去られた。一方、ハマスが運営するガザ地区の保健省によると、イスラエルの報復攻撃によって同地区ではこれまでに8000人以上が殺されている。
こうしたなか、ロンドンでは毎週、戦争への抗議デモが開かれている。28日には少なくとも10万人が抗議デモに参加し、停戦を訴えた。
この日の集会は大半が平和的だったが、ロンドン中心部で9人が逮捕された。そのうち5人が、人種差別にもとづく公序良俗違反や、公共の秩序を乱した罪、傷害罪で起訴された。
「過激主義を扱う法体系がない」
ロウリー警視総監は、警官は過激主義の法的定義によって行動を制限されていると指摘。その定義と取り締まり方についての見直しが望ましいと述べた。
「イギリス国内での過激主義対応は、もっと的確になれる余地がある。テロやヘイトクライムについてやるべきことはたくさんあるが、過激主義を扱う法体系がない。これが、欠落を生んでいる」
ロウリー氏によると、現在は検察庁の弁護士らが、警察の作戦室で罪状の特定を手伝っているという。
「大規模な抗議デモが続いており、その最中には、人々が動揺したり不快に思ったりする事柄も起きる。それは違法なはずだと、直感的に反応する人もいる」と、ロウリー氏は述べた。
「だが、起訴できないなら、何百人も逮捕する意味はない。そんなことをすれば、事態を悪化させるだけだ」
「我々は法に則って徹底的に取り締まる。これまでもそうしてきたように、全く断固とした態度で臨むつもりだ。来週以降も多くの逮捕者が出るだろう」
ロウリー警視総監によると、ハマスの襲撃以降の3週間で、ロンドンでは約100人が逮捕されている。