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BBC News

2023年10月31日

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イギリス政府は30日、イスラエルとパレスチナ自治区ガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスとの戦争における停戦を求めたとして、英保守党の議員を政府役職から解任した。イギリス政府は「人道的休戦」を支持しているものの、全面的な停戦は支持していない。

最大野党・労働党も同日、イスラエル・ガザ戦争に対して問題のあるコメントをしたとして、議員1人を一時除名処分にした。

政府の役職を解任されたのは、ミシェル・ドネラン科学相の議会担当秘書官を務めるポール・ブリストウ議員。ブリストウ議員は先週、リシ・スーナク首相に書簡を送付。「恒久的な停戦」が人命を助け、助けを最も必要としている人に支援を届ける手段だと訴えた。また、一般のパレスチナ人が「ハマスの犯罪によって集団的懲罰を受けるべきではない」と述べていた。

議会担当秘書官は、閣僚と議員との橋渡しをするのが仕事で、イギリスの内閣ポストとしては最も低い。

首相官邸は、ブリストウ氏が「内閣の連帯責任の原則と一致しない発言をしたため、政府役職を離れるよう求められた」と説明した。

集団的責任とは、政府のメンバーは、たとえ個人的に反対であっても、政府の政策を公に支持しなければならないという慣例を指す。

スーナク首相は25日の下院での定例首相質疑で、「特定の休戦」によってガザ地区への支援を拡大するべきだと発言。しかし、イスラエルには自衛権があると強調し、停戦を支持することを拒否した。

解任発表後にブリストウ議員はBBCに対し、「首相の決定を完全に理解しているし、楽しんでいた役職を離れるのには悔いが残る」と話した。その上で、「これからは、有権者の多くが憂慮している問題についてオープンに話せる」と述べた。

「政府の一員ではなく議員としての方が、この仕事をうまくできるだろう」

労働党議員、「川から海まで」と発言し除名処分に

英労働党は30日、パレスチナを支持する集会で「川から海まで」という文言を使ったとして、アンディー・マクドナルド議員(ミドルズブロー選出)を一時的に除名処分とした。

マクドナルド氏は、28日にロンドンで行われた親パレスチナ集会に参加。演説の中で、「我々は正義を手に入れるまで休まない。川と海の間にいるイスラエル人とパレスチナ人、すべての人々が平和的な自由の中で暮らせるようになるまで」と述べた。

「川から海まで」とは、ヨルダン川から地中海までの地域を指しており、イスラエルも含まれている。パレスチナ支持集会で唱和されて注目を集めているが、イスラエルの破壊を呼びかけるものだという批判も出ている。

スエラ・ブラヴァマン英内相は先に、このスローガンがイスラエルの破壊を求める内容に当たるか検討すべきだと、警察幹部に要請した。イスラエルや多くのユダヤ系団体は、ブラヴァマン氏の意見に賛成している。

一方、この解釈には一部の親パレスチナ活動家が反発。このスローガンを唱和するほとんどの人は、イスラエルによるヨルダン川西岸地区の占領とガザ地区封鎖の停止を求めているのであって、イスラエルそのものの破壊を求めているのではないとしている。

スーナク英首相の報道官は、「多くの人にとって非常に不愉快な、攻撃的なスローガンだ」と述べている。

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マクドナルド氏は今後、調査の対象となるが、その間は無所属の議員として下院に登院する。

マクドナルド議員は声明で、除名処分を受けたことを「悲しく思っている」と述べた。また、党の調査に自分の意見を説明した後、除名処分が覆ることを信じていると語った。

その上で、「自分の発言は、イスラエルとガザ地区、そして占領下のヨルダン川西岸地区での殺戮(さつりく)をやめさせ、この地域のすべての人々が暴力の脅威を受けることなく自由に暮らせるようにと心から訴えたものだ」と述べた。

労働党の広報担当はマクドナルド氏の発言について、「特に反ユダヤ主義が台頭し、ユダヤ人が身の危険を感じているこの時期に、きわめて不快なものだった」としている。

一方、党内からはマクドナルド氏を支持する声や、除名処分を批判する声も上がっている。

英政界では多くの野党議員が停戦を求めているが、労働党のサー・キア・スターマー党首は現時点では、与党やアメリカ、欧州連合(EU)と足並みをそろえ、人道的休戦を支持している。

しかし、ロンドンのサディク・カーン市長(労働党)やスコットランド労働党のアナス・サルワル党首を含む有力政治家が停戦を支持するなか、スターマー党首には全面停戦を支持するよう圧力がかかっている。

人道的休戦とは

人道的休戦は、正式な停戦と比べると短期間で終わることが多く、数時間だけの場合もある。

また、人道的支援を供給するためだけに行われるもので、長期的な政治的解決を求める動きとは異なるものとされる。

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は30日、「ハマスとの敵対行為の停止には同意しない」、「停戦を求める声は、イスラエルがハマスに降伏することを求める声だ」と述べ、停戦を拒否する構えを見せた。

ハマスは10月7日にイスラエル南部を襲撃し、約1400人を殺害。少なくとも239人を人質として連れ去った。それ以来、イスラエルはガザ地区に空爆を続けており、地上侵攻も開始した。

ハマスが運営するガザ地区の保健省によると、同地区ではイスラエルの攻撃により、これまでに8000人以上が殺された。

(英語記事 Ministerial aide sacked after call for ceasefire/ Labour suspends MP after pro-Palestinian rally speech

提供元:https://www.bbc.com/japanese/67269988


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