
在日米軍が、日本の水産物の大口購入を開始した。東京電力が8月に福島第一原発の処理水の放出を開始して以降、中国が日本産水産物の輸入を全面禁止していることへの対抗措置だという。
日本の水産物の最大の買い手だった中国は、安全性への懸念を理由に、輸入を全面的に禁止している。
アメリカのラーム・エマニュエル駐日大使は、中国の輸入禁止を同国による「経済戦争」の一部だと表現。これに対抗するため、米政府として別の方法を検討する可能性もあると述べた。
日本は昨年、中国にホタテ10万トン以上を輸出した。アメリカによる最初の購入は、それに比べるとわずかな量の1トン弱。
エマニュエル大使は、長期契約が始まったばかりで、今後あらゆる種類の水産物に拡大していくとロイター通信に話した。
購入した水産物は、米軍の食事に使われる。日本国内の基地の売店やレストランでの、販売も予定しているという。
エマニュエル氏は、「中国の経済的威圧の影響を低減させるには、対象となっている国や産業を支援することが、最善の方法だと我々はすでに実証済みだ」と述べた。
同氏によると、米軍はこれまで日本の水産物を日本では購入していなかった。米政府として、日本と中国からの魚の輸入について検討する可能性があると述べた。
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エマニュエル氏の発言を受け、中国外務省の汪文斌報道官は30日の記者会見で、「外交官の責務は、国家間の友好を促進することであり、他国を中傷したり問題をあおったりすることではない」と述べた。
エマニュエル大使はここ数カ月、経済政策や外国企業への対応などをめぐり、中国に対して批判的な発言を繰り返している。
米政府は、アントニー・ブリンケン国務長官などの高官が中国を訪問し、世界2大経済大国の間の緊張緩和に努めている。
G7が輸入禁止撤廃を求める
福島原発は2011年の東日本大震災で発生した津波によって、甚大な被害を受けた。原子炉の冷却に使用された100万トンを超える水が、処理されてためられてきた。東京電力は今年8月、処理水の太平洋への放出を開始した。
日本は処理水は安全だとし、多くの科学者もそれに同意している。国連の国際原子力機関(IAEA)も、処理水の放出計画を承認している。
そうした状況で、中国は輸入禁止に踏み切った。
日本は、中国やフランスの原発からも同様の廃水放出が行われていると強調している。
日本は定期的に報告書を公表し、福島原発付近の海水から検出可能な濃度の放射能物質が確認されていないと示している。
29日には主要7カ国(G7)貿易相会合があり、日本の食品に対する輸入禁止を直ちに撤廃することなどを求める共同声明を出した。