アパレル大手アバクロンビー・アンド・フィッチが27日、米ニューヨーク州で訴えられた。マイク・ジェフリーズ元最高経営責任者（CEO）の性的人身売買に資金を提供していた疑いが持たれている。ジェフリーズ氏については先にBBCの調査チームが、世界各地でセックスイベントを開催し、複数の男性を搾取していた疑惑を報じた。
ニューヨーク州南部地区の連邦地方裁判所に提訴した原告側は、同社がジェフリーズ氏に対し、同氏による「犯罪事業」を可能にするリソースを「自由に使わせていた」と主張している。
また、ジェフリーズ氏とイギリス人パートナーのマシュー・スミス氏を、性的人身売買や性的不正行為、強姦などの罪で告訴している。
アバクロンビー・アンド・フィッチは今回、「成人サバイバー法」に基づいて訴えられた。同法は、時効が成立している性暴力容疑について、被害者による提訴を可能にするもの。
原告側はまた、多人数の集団を代表して数人が提訴する、集団訴訟としての認定を求めている。
被害を主張する数人の代理人を務めているブラッド・エドワーズ弁護士は、「この訴訟と、名乗り出た勇敢な男性たちのおかげで、アバクロンビーは、何十人もの若者の人生を破壊した、数々の容認できない行動と不作為について、答えを出さなければならなくなるだろう」と述べた。
アバクロンビー・アンド・フィッチは、この訴訟についてコメントしないと述べている。
ジェフリーズ氏の弁護人を務めるブライアン・H・ビーバー氏は、「我々は法廷でこの件を取り扱う」として、コメントに応じなかった。
BBCはスミス氏にもコメントを求めている。
BBCの調査報道番組「パノラマ」の取材では、ジェフリーズ氏とスミス氏が仲介人を使い、組織的なネットワークを通じて主催するイベントのために、若い男性を見つけてはイベントに送り込んでいたことがわかった。
BBCは、こうしたイベントに参加したという男性8人から話を聞いた。中には性的な搾取や虐待を受けたと主張する人たちもいた。
アバクロンビー・アンド・フィッチはこの報道の際、ジェフリーズ氏の問題行為の疑惑に「驚き、不快感を覚えている」と述べていた。ジェフリーズ氏は弁護士を通し、コメントしないと回答した。
「性的人身売買の資金源に」
訴状はアバクロンビー・アンド・フィッチについて、ジェフリーズ氏がCEOだった1992～2004年の間、同氏が率いていた「性的人身売買組織の資金源」となっていたことを知っていた、あるいは知っていてしかるべきだったと指摘している。
また、ジェフリーズ氏がジェット機や移動手段、無制限の現金といった同社のリソースを使って、性的人身売買の組織を運営していた疑いがあると主張。ジェフリーズ氏はそのおかげで「驚くほどのスピードで新たな犠牲者」を増やすことができ、モデル志望の男性たちと知り合うことができたと述べている。
訴状はさらに、アバクロンビーの役員らが、ジェフリーズ氏が生み出した利益が経営不振に陥っていたアバクロンビーを10億ドル規模のブランドへと成長させたことから、同氏の行為に「見て見ぬふり」していたと非難している。
「アバクロンビーが加担したことで、ジェフリーズ氏は法執行機関による摘発を恐れることなく、口止め料としてばく大な現金を支払いながら、何十人もの男性に性的虐待を加える自由を得た」
「性的搾取はジェンダーを問わずに起こる」
今回の訴えを起こしたのは、BBCが取材した元モデルのデイヴィッド・ブラッドベリー氏（37）。
ブラッドベリー氏は、自分が持つ「情報と信念」に基づき、自身と他人を代表して提訴に踏み切った。ジェフリーズ氏は自宅や海外で男性のキャスティングを行い、モデル候補にアバクロンビー・アンド・フィッチのギフトカードや衣服を提供していたと、ブラッドベリー氏は主張している。
また、男性らはジェフリーズ氏の指示でドラッグ使用を強要され、ジェフリーズ氏やパートナーのスミス氏との性行為に参加させられたと述べた。
原告側は、ジェフリーズ氏とスミス氏を、ブラッドベリー氏らに肉体的・精神的傷害とトラウマを与えた性的不法行為、強引な接触、レイプで告訴している。
被害を訴える複数人の代理人を務めるブリタニー・ヘンダーソン弁護士は、「性的搾取はジェンダーを問わずに起こる。複数の男性が何十年もの間、モデルやファッション業界で搾取されてきた」と述べた。
「この訴訟は、#MeToo運動をジェンダーを超えて拡大するため、そして業界全体における性的搾取の根絶に向けて非常に重要だ。まずはアバクロンビー・アンド・フィッチからだ」
