
フランス・パリとその近郊で10月31日までに、ユダヤ人を象徴する「ダビデの星」の落書きが相次いで見つかった。仏当局は「反ユダヤ主義的」な行為だとして捜査を開始すると発表した。政治指導者たちは、多数のユダヤ人が虐殺された「1930年代を想起させる」としている。
ユダヤ人を象徴する「ダビデの星」はイスラエル国旗にも描かれている。
パリ14区では30日夜、建物の壁に「ダビデの星」が約60個スプレーで落書きされた。
フランスでは反ユダヤ主義的な事案が大幅に増加している。
ジェラルド・ダルマナン仏内相によると、パレスチナ自治区ガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスによる、10月7日のイスラエルへの奇襲攻撃から始まったハマスとイスラエルの軍事衝突以降、フランスではこうした行為が850件以上報告されているという。
「人種差別的」
パリ当局は人種差別的意図による器物損壊の疑いがあるとして捜査を開始すると発表した。
落書きされた建物の住民は、「泣いている。子供のころに受けた憎悪に再び直面しているので」と地元放送局BFMTVに語った。「こんなことをするなんて理解できない」。
パリ14区の区長は声明で、この行為は「何百万人ものユダヤ人が抹殺された(中略)1930年代の出来事を想起させる」とした。
パリのエマニュエル・グレゴワール副市長は、ダビデの星の落書きは消し去られ、捜査が開始されると述べた。
「反ユダヤ主義は人を殺し続けている」、「我々は決して闘いをあきらめない」とグレゴワール氏は述べた。
同様の落書きは、パリ郊外のヴァンヴ、フォントネー・オー・ローズ、オーベルヴィリエ、サン・トゥアンなどでも見つかっている。ダビデの星の落書きには、「川から海まで、パレスチナが勝利する」との文字が添えられていた。「川から海まで」とは、ヨルダン川と地中海の間の土地(イスラエルも含まれる)を意味し、パレスチナ支持の抗議行動のスローガンになっている。
サン・トゥアンのカリム・ブアムラン市長は、「反ユダヤ主義的で人種差別的」な落書きをした犯人について、法律上可能な限り刑事責任を問うとした。
エリザベス・ボルヌ仏首相は、「恥ずべき行為」だと非難した。
BFMTVの世論調査によると、反ユダヤ主義的な事案の急増はフランス人の83%を悩ませている。
エマニュエル・マクロン大統領を含むフランスの政治指導者たちは、イスラエルとハマスの戦闘が引き起こす緊張がフランスに「流れ込む」危険性を警告している。
エリック・デュポン=モレッティ法相は10月29日、同月だけで約400人が、反ユダヤ主義的行為を行ったとして逮捕されたと発表した。
31日には、パリの列車内で「アッラーフ・アクバル(神は偉大なり)」と叫ぶなどした女性が、駆け付けた警官に撃たれて重傷を負った。警察は、女性が脅迫的な行動を取り、指示に従わなかったため発砲したとしている。