2023年12月1日(金)

BBC News

2023年11月5日

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アメリカのジョー・バイデン大統領は4日、「人道的休戦」をめぐる協議に進展があったことを示唆したが、詳細は示さなかった。アントニー・ブリンケン米国務長官は同日、イスラエルがパレスチナ自治区ガザ地区で停戦した場合イスラム組織ハマスが立て直しを図り、次の攻撃を起こすだろうとの見方を示した。他方、国連は同日、同地区で150万人近くが家を失い、71万人以上が国連施設に避難していると発表した。

バイデン大統領は4日、米デラウェア州の教会から出た際に、いわゆる「人道的休戦」をめぐる協議に進展はあるかと記者に問いかけられ、「イエス」と答えて親指をあげる仕草をした。ただし、詳しい状況は明らかにしなかった。

「自衛とは認めない」=ヨルダン外相

これに先立ちブリンケン氏はこの日、ヨルダンを訪問し、イスラエルとハマスの戦争で即時停戦を求めているアラブ諸国の指導者と会談した。今回の会談には、サウジアラビア、カタール、アラブ首長国連邦(UAE)、エジプトが参加した。

アラブ諸国は、イスラエルのガザ地区攻撃は戦争犯罪に当たると非難している。一方のアメリカは、ハマスに対するイスラエルの自衛権行使を支持している。

ヨルダンのアイマン・サファディ外相は、会談後の共同記者会見で、「我々はこれを自衛とは認めない」と発言した。

サファディ氏はこの紛争について「民間人を殺し、彼らの家や病院、学校、モスク(イスラム教の礼拝所)、教会を破壊している」と説明。

「どんな文脈でも正当化できず、イスラエルの安全保障も実現されない。この地域の平和も実現されない」と述べた。

一方、停戦ではなく人道的休戦を訴えているブリンケン氏は、この地域の恒久的な平和を達成する手段について、アメリカはアラブ指導者たちと同意しない部分もあるものの、目的は同じだと語った。

「より良い道をともに切り開くことは、自分たちの利益につながるというだけでなく、そのために全力を尽くす責任が我々にはある」と、国務長官は述べた。

ブリンケン氏はこの前日にイスラエルを訪問し、ベンヤミン・ネタニヤフ首相と会談している。ネタニヤフ首相は、全てのイスラエル人の人質が解放されるまでは人道的休戦には応じないと述べた

この戦争が他の地域勢力を引き込み、中東の不安定化につながるのではないかという懸念もある。

ハマスは10月7日にイスラエル南部を襲撃し、1400人以上を殺害したほか、約240人を人質として連れ去った。一方ハマスが運営するガザ地区の保健省は、イスラエルの報復攻撃により、これまでに少なくとも9488人が殺されたとしている。

イスラエル国防軍(IDF)は現在、ガザ地区北部への攻撃を激化させており、民間人に退避を呼びかけている。

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しかしアメリカのデイヴィッド・サターフィールド中東平和特使によると、北部にはなお民間人約40万人が残っている。

IDFはまた、南部も爆撃しており、国連はガザ地区に安全な場所はないと警告している。

ブリンケン氏は4日、エジプトとの境界にあるラファ検問所からガザ地区に入る支援物資の量を、劇的に増やす必要があると語った。

イスラエルは10月7日以降、ガザ地区を封鎖しており、電力や食料、水、燃料などの供給を止めている。ガザ地区には現在、限られた支援物資しか運び込まれていない。

イスラエル、ガザ地区北部での攻撃激化

こうしたなか、IDFは包囲した北部ガザ市への攻撃を激化させている。

イスラエルは4日、同市から退避する人のために南側の主要道路を3時間開放すると述べた。一方で、ハマスが人々の避難を妨害していると批判した。

また、ヨアヴ・ガラント国防相はハマスの指導者のリストを公開し、彼らを「発見し排除」するのが目標だと述べた。

リストには、ガザ地区のハマス・トップ、ヤヒヤ・シンワル氏や、軍事部門トップのムハンマド・デイフ氏の名前がある。イスラエル軍関係者によると、2人は現在、ガザ地区のトンネル網のどこかにいるという。

ガラント氏は、IDFはガザ市の包囲を完了しており、南北から「人口密集地に入っている」と記者会見で述べた。

イスラエル軍、ガザの民間人を中心地区へ

ガザ地区で取材を続けているBBCのラシュディ・アブ・アルーフ記者は、イスラエル軍はガザ地区の西部と東部に侵入し、民間人を中心地区に押し込めようとしているようだと報じた。

最も攻撃が激しいのは北西部で、何十台もの戦車や装甲車が海岸沿いにガザ地区に侵入。その後、東へ移動し、ガザ市を孤立させようとしていると説明した。

また、ガザ市ではイスラエル軍がアル・クッズ病院周辺への空爆を強化しているという。同病院には現在、安全を求めて数千人が中庭に避難している。

アブ・アルーフ記者によると、一連の空爆は市民を再び南部に移動させ、ガザ市から離れさせるためのものだというのが大勢の見方だという。

4日には、北部のジャバリア難民キャンプ内の学校が攻撃されたと、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)がBBCに明らかにした。最多で20人が亡くなったと報告されている。イスラエル軍は、事態を把握しようとしているとしている。

150万人以上が家を失った=国連

国連はこの日、ガザ地区の最新の人道状況を発表した。それによると、同地区では150万人近くが家を失い、71万人以上がUNRWAの施設に避難している。

国連は、過密な状況が避難者に「深刻な健康上、安全上のリスク」を引き起こしていると指摘。また、メンタルヘルス(心の健康)にも大きな影響があると述べた。上下水道への被害も、公衆衛生にリスクを与えているという。

北部から退避してきた人が集まっている南部では、UNRWAの92カ所の施設に、あわせて53万人ほどが避難している。施設は収容人数を超えて新たな避難民を受け入れられず、人々は施設周辺の道路で寝泊まりしているという。

一方、ガザ市や北部でも、UNRWAの施設に約16万人が避難している。しかし国連は、北部の人々の状況や必要なものを正確に把握できないため、支援を提供できなくなっていると述べた。

レバノン情勢は

ブリンケン米国務長官はまた、レバノンのナジブ・ミカティ暫定首相とも会談し、レバノン南部のイスラエル国境での暴力についても協議した。

南部では、ハマスを支持するイスラム教シーア派武装組織ヒズボラとイスラエル軍が衝突を繰り返している。

ヒズボラの最高指導者であるハッサン・ナスララ師は現時点では、イスラエルとの戦いをエスカレーションさせていない。しかし3日の演説では「あらゆる選択肢の用意がある」と宣言している。

ブリンケン氏は5~6日にトルコを訪問し、レジェップ・タイイップ・エルドアン大統領とイスラエル・ガザ戦争について協議する予定。

エルドアン大統領はかねてイスラエルの攻撃を激しく非難しており、先にはイスラエルから大使を送還したほか、ネタニヤフ首相との連絡を断っている。

(英語記事 Blinken rejects call for Israeli ceasefire in Gaza/ Arab nations demand Gaza ceasefire, but US warns this would help Hamas

提供元:https://www.bbc.com/japanese/67325212


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