
イギリスのスエラ・ブラヴァマン内相は4日、ホームレス状態の人々のテントの使用を制限する新しい法案を議会に提出した。また、路上生活は多くの場合、当人が「選んだライフスタイル」だとソーシャルメディアに書いた。
ブラヴァマン内相の法案では、イングランドとウェールズを対象に、当局が支援を拒否したと判断した路上生活者に新たな罰則を科すという。
ブラヴァマン氏は、「公共スペースにテントを張って迷惑をかける者」を止めるのが目的だと述べた。
慈善団体は、「誰もホームレス状態にあることを理由に、罰せられるべきではない」と述べた。
ブラヴァマン氏はソーシャルメディアで、「イギリスにいる誰も、路上にテントを張って生活するべきではない。路上で生活したくない人には、選択肢が用意されている」と述べた。
内相はさらに、本当にホームレス状態にある人を政府は常に支援するものの、「当人が選んだライフスタイルとして路上で生活する人たち(その多くは外国から来た人たち)が張ったテントの列に、私たちの街の通りが占拠されるのは、許されないことだ」と付け加えた。
「私が止めたいのは、そして法を守る多数派が止めさせるよう私たちに求めているのは、公共のスペースにテントを張って他人に迷惑や不安を与えている人々だ。彼らは攻撃的に物乞いをし、盗みを働き、薬物を使い、ごみを投げ捨て、私たちのコミュニティーを荒らしている」
その上で、対策を取らなければ「イギリスの街も、アメリカのサンフランシスコやロサンゼルスなど、弱腰の政策によって犯罪や薬物や不衛生が蔓延(まんえん)する街のようになってしまう」と述べた。
英紙フィナンシャル・タイムズによると、この法案は「1824年浮浪者取締法」の一部の代わりになる予定だという。
関係者筋の話として同紙は、イングランドとウェールズに適用される新しい刑事法案に、二つの条項を挿入することが検討されていると伝えた。これは、店舗の出入り口をふさぐなど、迷惑行為を引き起こすテントを対象とするものだという。
また、迷惑行為とみなされた場合、慈善団体がテントを配ることに罰金を科す民事犯罪の創設も含まれている。
慈善団体や野党から批判の声
ホームレス状態の人々を支援する慈善団体「シェルター」のポリー・ニート代表は、「路上生活は、その人が選んだライフスタイルではない」と述べた。
また「ホームレス状態とは、住宅政策が失敗し、人々が他に住むところがない状態になった時に起こるものだ」と指摘した。
「家賃は史上最高を記録しており、立ち退きは増加し、生活費の危機は続いている」
最大野党・労働党のアンジェラ・レイナー副党首は、政府はホームレス状態の人を責めるのではなく、住宅危機の責任を負うべきだと述べた。
「家賃の高騰と、無過失退去の廃止を失敗したことが合わさって、社会的弱者をひどく直撃している。しかし何年もの遅れにも関わらず、保守党はまだ対策するという約束を守っていない」
無過失退去とは、貸主が借主に対し、理由を示さずに契約終了時の立ち退きを求められるとするもの。保守党は2019年の総選挙で、この廃止を公約していた。
野党・自由民主党のアリスター・カーマイケル住宅担当報道官も、「路上で生活する人々を冬の間、暖かく乾燥した場所にとどめようとする慈善団体を犯罪者扱いする」のは「厳しい政治」だと述べた。
「この政策では、路上生活をなくすことはできず、弱い立場の人々がシェルターなしで厳しい気象条件に直面することになる」
ロンドンのサディク・カーン市長は、この政策は「非常に気が滅入るものだ」とソーシャルメディアに投稿した。
カーン市長は、「政府は社会住宅への投資を増やし、住宅給付率を引き上げ、無過失退去を禁止すべきだ」と、書いている。