2023年11月30日(木)

BBC News

2023年11月7日

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フェラス・キラニ、BBCニュース・アラビア語

パレスチナ自治区ガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスの幹部がBBCのインタビューに応じ、イスラエルを急襲したハマスが民間人を殺害したことを否定した。標的にしたのは兵士だけだったと主張した。

ハマスの政治部門ナンバー2のムーサ・アブ・マルズーク氏はBBCの取材に対し、ハマスの攻撃から「女性や子供、民間人は除外されていた」と述べた。

10月7日のハマスの襲撃をめぐっては、マルズーク氏の主張とは対照的に、戦闘員らが非武装の成人や子供たちを銃撃している証拠映像が多数残っている。

イスラエルは、ハマスがこの攻撃で1400人以上を殺害し、その大半が民間人だったとしている。

マルズーク氏はイギリスで対テロ規制の対象となっており、資産が凍結されている。今回のインタビューは4日に湾岸諸国の一つで行われた。先月7日の襲撃以降、BBCが取材したハマス幹部としては最高位の人物。

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BBCは、ガザ地区での戦争や、同地区内にとらわれている人質について質問した。

マルズーク氏は、イスラエルがガザ地区に爆撃を続けているかぎり、人質は解放できないと語った。ハマスが運営するガザ地区の保健省によると、イスラエルが攻撃を開始してから1万人が殺害されている

「人質は解放する。しかし戦闘を止めなければならない」と同氏は述べた。

マルズーク氏は先にモスクワを訪問し、ハマスが人質にしたロシアとイスラエルの二重国籍を持つ8人の処遇について協議した。ハマスは英米など多くの国からテロ組織に指定されている。

同氏によると、ガザ地区のハマスのメンバーは、ロシアから来た「女性の人質2人を探して見つけた」が、軍事衝突が続いていることから解放できなかったという。

同氏はまた、現実的に人質を解放できるのは、「イスラエルが戦闘をやめ、赤十字に人質を引き渡せる」場合だけだと述べた。

民間人は「除外」していた

10月7日の襲撃についてマルズーク氏は、ハマスの軍事部門「カッサム旅団」のリーダーのムハンマド・エル・デイフ氏が、民間人には危害を加えないよう部下に命じたと主張した。

「エル・デイフは『女性も子供も老人も殺すな』と、戦闘員らにはっきりと言っていた」

一方で、予備役兵は攻撃の「標的だった」と説明。殺害したのは「徴集兵か兵士」だけだと主張した。

そして、女性、子供、民間人は「除外」されていたとした。

証拠映像については語らず

ハマス戦闘員のヘルメットのカメラが撮影した映像には、非武装の住民らが車や家の中で撃たれている様子が映っている。

このことについて問われると、マルズーク氏は直接は答えなかった。

ハマスの政治部門は攻撃準備を知っていたのかとの問いには、「(軍事部門は)政治指導部と相談する必要はない。その必要がない」と述べた。

ハマスの政治部門は、カタールを拠点にしている。ガザ地区の軍事部門とは距離があると説明することが多い。

イギリス政府は両部門を区別しておらず、2021年にハマスの政治部門をテロ組織に指定した。

マルズーク氏はまた、米財務省によって国際的なテロリストに指定されており、ハマスの活動を調整し資金を提供した罪などで起訴されている。

約240人が人質に

イスラエルはアメリカの「人道的一時休戦」の求めを拒んでいる。アメリカは、ガザ地区への支援物資の搬入と人質240人の救出のため、一時休戦すべきだとしている。

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は3日、いかなる一時停戦も、人質全員の解放がなければ実現しないと述べた

マルズーク氏は、ハマスが「ゲスト」と呼ぶ人質全員のリストは持っておらず、その多くがどこにいるのかも知らないと主張。理由として、「異なる派閥」に分かれて拘束されているからだとした。

ガザ地区には、「イスラム聖戦」などいくつかのイスラム組織がある。それらはハマスと密接に連携しているが、表向きは独立している。

マルズーク氏は、人質の情報を集約するには停戦が必要だとし、ガザ地区が砲撃を受けている間は他の事柄が優先されると述べた。

同氏は今回の紛争の展開において、重要な役割を果たすとみられている。人質をめぐる交渉でも、中心人物となる可能性が高い。

(英語記事 Hamas leader denies killing of civilians in Israel

提供元:https://www.bbc.com/japanese/67341330


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