
シヴァニ・チャウダリ、ソニア・ワトソン BBCニュース(エセックス)
イギリス式の英語発音のいわゆるキングス・イングリッシュや、「マイ・フェア・レディ」で世界的に有名になったコックニーの発音が、ロンドンを中心としたイングランド南東部の若い世代の間で、もはやあまり使われていないことが、最新の研究で明らかになった。
英エセックス大学の研究チームは、南東部エセックス地域の18~33歳の英語発音を調べた。その結果、エスチュアリー(テムズ川の河口域)英語、イギリス南部英語、そして多文化ロンドン英語の三種類の発音を特定した。
研究を主導するアマンダ・コール博士は、多文化ロンドン英語について、「非常に革新的で面白いアクセントがある」と説明した。
「この発音は比較的最近、恐らく1980年代に生まれたと考えられ、コックニーやイングランド南東部の発音と多くの共通点がある。その一方で、他の言語や、英語の他の発音由来の言語学的特徴も備えている」
多文化ロンドン英語を話す若者は、調査に参加した193人の25%に上った。
この発音は標準的なイギリス南部英語に比べ、母音を発音する時の舌の位置が高いとコール氏は説明。その結果、たとえば舟を表す「boat(ボウト)」は「boht(ボート)」のように聞こえるという。あるいは、「bate(ベイト)」を発音すると、「beht(ベート)」に近い音になるという。
ロンドン在住やイングランド南東部に住むアジア系イギリス人や黒人イギリス人に、この発音が多くみられると、コール博士は説明する。
研究によると、キングス・イングリッシュや、ロンドンの労働者階級の発音とされるコックニーの発音は、ここ数年であらゆる年齢層が話すようになった。しかし調査に参加した若者の間では、イギリス南部英語を話す人は49%に上った。このためこの研究では、イギリス南部英語が、いわゆる「標準」的な発音とされる容認発音(Received Pronunciation、RP)の現代版だと位置づけている。
このイギリス南部の発音の仕方では、たとえば口を前に突き出して発音する「goose(グース)」で、かつてのRPよりも舌が前に出るため、「ギース」に少し近い音になるという。
昨年9月に亡くなったエリザベス女王の発音にも同様の変化があったと、研究者たちは話す。故女王でさえ、一生の間で発音が変わっていったのだという。
エスチュアリー英語を話す若者は全体の約26%だった。この発音はコックニー発音とも共通点があるが、RPの方に近い。そのため、たとえば「house(ハウス)」は「hahs(ハース)」に近くなるが、コックニー発音ほどはっきりと変わるわけではないという。
エスチュアリー英語はイングランド南東部、特にエセックス州の一部で聞かれる。歌手のアデルさんの話し方が、エスチュアリー英語に近いとされる。
イギリスでの発音の変化についてエセックス大の研究チームは、「人が活発に移動するようになった結果、異なる発音の仕方同士の接触が増えたこと、普遍的な教育と識字率が向上したこと、そして世の中には『正しい』または『標準的な』話し方が存在するという考えを大勢が受け入れたことが、変化の原因だ」としている。
(英語記事 Cockney and King's English becoming less common, researchers find)