
ウクライナ軍のヴァレリー・ザルジニー総司令官の側近が6日、キーウ西郊チャイキの集合住宅の自宅で、誕生日プレゼントの手投げ弾の爆発によって死亡した。
ウクライナ当局によると、死亡したのはヘンナジー・チャスチャコフ少佐(39)。同僚からプレゼントを受け取り、自宅に持ち帰って息子(13)と一緒に開けたところ、中にあった手投げ弾が爆発した。
少佐は死亡し、息子は重傷を負ったという。
イホル・クリメンコ内相は当時の状況について、息子が手投げ弾を手にし、リングを回し始めたと説明。「(少佐が)子どもから手投げ弾を取り上げ、リングを引っ張り、悲劇的な爆発が起きた」と述べた。
検察当局は後に、少佐が息子から手投げ弾を取り上げようとして誤って爆発させたと説明した。
クリメンコ氏は「悲劇的な事故」だとし、公式の捜査結果を待つよう国民に訴えた。警察は「爆弾を不注意に取り扱った結果」の爆発だとした。
ザルジニー総司令官は死亡した少佐について、昨年2月にロシアが全面侵攻を開始して以来、信頼できる側近だったとした。そして、軍も自分も言い表せない痛みを感じているとし、大きな損失だと述べた。
総司令官を狙ったとの憶測も
チャスチャコフ少佐の自宅ではその後、さらに5個の手投げ弾が見つかった。クリメンコ氏はそれらについて、少佐の同僚の陸軍大佐からの贈り物だとした。
その大佐に関する捜索では、似たような手投げ弾が2個発見されたという。
爆発現場の写真には、床に別の手投げ弾やプレゼントの袋が置かれているのが写っている。少佐は手投げ弾とウィスキーのボトルを一緒に袋に入れ、自宅に持ち帰ったとみられる。
現地紙ウクラインスカ・プラウダは関係者の話として、ウィスキーのボトルは手投げ弾の形をしたグラスと一緒に袋に入れられ、その袋を開けたときに爆発が起こったと報じた。別の報道によると、同僚が少佐にボトルを渡した時、「あなたを驚かせるのは難しい。だから手投げ弾と、いいウイスキーを贈る」と言ったという。
大統領支持派のマリアナ・ベズルハ議員は、「ヘンナジー(少佐)が誕生日に不注意で死ぬとは思いもしなかった。手投げ弾は支給品であり、プレゼントではない」と話した。
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ウクライナのコメンテーターらからは、爆発原因に関する当局の説明を疑問視する声も出ている。少佐の誕生祝いにザルジニー総司令官が参加することを見越した、ザルジニー氏を狙った攻撃だったとの見方も浮上している。
ザルジニー氏は先週、英誌エコノミストに、「第1次世界大戦と同じように、私たちは行き詰まり状態に陥る技術レベルに達している」、「深く美しい突破はおそらくないだろう」と述べていた。
ただ、ロシアもウクライナも戦争の行き詰まりを否定している。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は先週末、「いま、人々は疲れ、みんなが疲れ、異なる意見がある。それは明らかだが、行き詰まってはいない」と述べた。
6日夜の定例演説では、ゼレンスキー氏は国民に団結を訴えた。また、来春に予定されている大統領選挙について、戦争を理由に「今は適切な時期ではない」との考えを示した。ゼレンスキー氏は2019年から大統領を務めている。