2023年12月1日(金)

BBC News

2023年11月9日

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実施まで1年を切った2024年の米大統領選は、2020年の選挙の再来となりそうだ。ただし今回は、現職大統領はジョー・バイデン氏で、それに挑むのがドナルド・トランプ氏と、立場は逆転している。

有権者が4年前と同じ選択を迫られることに、不満が広がっている。あらゆることが、見覚えのあるパターンどおりに進んでいるように見える。世論調査さえ、接戦を示している。

しかし、残りの1年で何が起きてもおかしくはない。どんな歴史家でもそう言うだろう。1980年の大統領選でジミー・カーター大統領(当時)は再選を逃した。前年の1979年に在イラン米大使館で起きた人質事件で、救出作戦に失敗したことがほぼ間違いなく敗北につながった。そして2020年には、新型コロナウイルスのパンデミックが、アメリカという国のかたちを変えた。

では、次の大統領選の流れを変えうる四つのサプライズについて見てみよう。

無所属候補が勢いを増したら?

キャティー・ケイ記者

共和党にも民主党にも属していないなら、アメリカの大統領になれる可能性は限りなく低い。しかし、過去に第三党の候補者が選挙結果をひっくり返したことがある。それと同じことが、2024年に再び起きるかもしれない。

1992年の大統領選では、裕福な実業家ロス・ペロー氏が独立系候補として出馬し、得票率19%を記録した。保守派の支持を取り込み、現職のジョージ・H・W・ブッシュ氏(共和党)が民主党候補のビル・クリントン氏に勝利するのを妨げたと言われている。

2000年には、緑の党候補のラルフ・ネーダー氏がフロリダ州で9万7488票を獲得。この激戦州でジョージ・W・ブッシュ氏(共和党)が現職副大統領だったアル・ゴア氏(民主党)を破るのにつながった。2016年の選挙でも、緑の党のジル・スティーン氏がヒラリー・クリントン氏(民主党)を苦しめたとの見方もある。

今回の選挙でも同じような意外な展開が見られるかもしれない。私が今週インタビューしたアメリカの有力政治家は、バイデン大統領と、共和党候補者指名争いで最有力とされるトランプ氏の支持率がいずれも低いことから、より多くの人がチャンスを得る可能性があると指摘した。米調査会社ギャラップ社の最近の世論調査でも同様のことが示唆されている。

すでに、2人の無所属候補が参戦している。進歩派的な活動家コーネル・ウェスト氏と、最近民主党を離党したロバート・F・ケネディ・ジュニア氏だ。離党前の世論調査では、ケネディ氏は民主党有権者の約20%の支持を得られる可能性が示唆されていた。無所属となり、陰謀論志向の有権者にアピールする同氏は、トランプ氏から票を奪うかもしれない。

今回の選挙は接戦となる可能性が高く、第三党の人物にわずかな票が流れるだけでも、選挙結果に大きな影響が及ぶ可能性がある。

投票日前にどちらかが死去したら?

ノミア・イクバル記者

この疑問はたくさん耳にしている。バイデン大統領とトランプ前大統領は高齢だ。2025年の就任式当日、バイデン氏は82歳、トランプ氏は78歳になっている。2人の健康状態が悪いという兆候はないものの、投票日までに2人に何かが起きたらどうなるのだろうか。

答えは、その何かが起きる時期によって変わってくる。

仮に、いまから2024年の元日までの間に、重い病気にかかったり死亡したりした場合は、代わりの候補者指名を争おうという人が民主党側でも共和党側でも大勢出てくる。しかし、各州の予備選の結果が確定していくにつれて、状況はより複雑になっていく。

2024年10月中旬に最悪の事態が起こっても、2人の名前は本選の候補者として残る。合衆国憲法によると、たとえ死亡して宣誓できない状況になっても立候補は有効とされる。

過去にこうした事態が起きたことがある。2000年、上院議員選挙に立候補していたメル・カーナハン氏は、選挙イベントに向かう途中、飛行機事故で死亡した。死後に行われた選挙で当選したため、2002年に特別選挙が行われるまで妻ジーン氏が代わりを務めた。

大統領に当選した人が就任式前に死亡した場合は、副大統領が代わりに就任する。副大統領は自分の後任を指名しなければならない。後任者は議会の承認を得て正式に副大統領に就任する。

かなり複雑なので、立候補者全員が健康であることを祈ろう!

外国の戦争がエスカレートしたら?

バーバラ・プレット・アッシャー記者

バイデン大統領はロシアのウクライナ侵攻や、イスラエルのイスラム組織ハマスへの報復攻撃など、国際的な危機に悩まされる中、再選を目指している。中国が台湾の領空に対する軍事的圧力を着実に強めている危険な状況は言うまでもない。

バイデン氏のチームは、同氏を信頼できる最高司令官として描くため、この状況を政治的に利用しようとしている。バイデン氏は世論調査で、二つの戦争への対応について比較的高い評価を得ている。

ただ、同氏の選挙キャンペーンではすでに憂慮すべき傾向が見られる。特に、民主党支持の若い有権者という重要な層からの支持が落ちている。パレスチナ人の犠牲者が増える中、同氏がイスラエルを強く支持していることに怒りを感じているためだ。

そして、いずれかの戦争が現状の境界を越えて拡大することになれば――ロシアが北大西洋条約機構(NATO)加盟国を攻撃したり、イランと同盟関係にある武装集団がハマスと一緒にイスラエルとの戦闘に加わったりすれば――大統領選をめぐる予測は覆り、混乱の1年となるだろう。

抑止力を持つアメリカは、現在の傍観者としての立場を維持できなくなるのだろうか。

国際的な混乱は、バイデン氏のライバルとなる可能性の高いトランプ氏の今後の見通しにダメージを与えるのだろうか。それともトランプ氏は、アメリカが外国の戦争に資金を拠出したり、場合によっては外国での戦闘に再び加わったりすることにうんざりしている有権者から、後押しを受けることになるのだろうか。

多くの要因は彼らがコントロールできるものではない。中東問題では特にそうだ。どの大統領候補も、良い立場には立てない。

トランプ氏が刑務所に入ったら?

ギャリー・オドノヒュー記者

前大統領はこれまでに4回、刑事事件で起訴されている。罪状は計91件で、すべての裁判は来年開始される見通し。

最長の刑期は数百年に及ぶ可能性があるが、有罪判決を受けたとしても、実際にそうした量刑が言い渡されると考える法律の専門家はほとんどいない。

トランプ氏の弁護団は、来年の大統領選が終わるまで裁判の開始を遅らせようと懸命に努力してきたが、うまくいかなかった。弁護団は、トランプ氏が大統領に選ばれれば、おそらく4年間は裁判を先延ばしにできると分かっている。現職大統領を訴追するには、米下院が弾劾訴追を求める決議案を可決し、上院の弾劾裁判で罷免される以外の道はないというのが、多くの法律家の見解だ。

選挙前に刑務所に入ったとしても、選挙に勝てなくなるというわけではない。

重罪で有罪判決を受けても、大統領選への出馬は妨げられない。100年前には、獄中にいながら100万票近くを集めた候補者がいた。選挙運動に支障をきたすのは明らかだが、共和党支持の有権者の多くがトランプ氏への興味を失うことはないであろうことが、世論調査で示唆されている。

獄中で大統領に選出された場合、連邦法違反での有罪についてはトランプ氏自身が赦免できるかもしれない。しかし、2件の州法違反での起訴のうちのいずれかででも有罪となり、収監された場合、トランプ氏には赦免の権限はなく、受刑者ながら大統領になるという奇妙な状況になりうる。

まさに前代未聞の領域であり、国内最高の頭脳を持つ法律家たちでさえ、頭を悩ませている。

(英語記事 Four surprises that could upend the 2024 US election

提供元:https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-67330027


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