2023年11月30日(木)

BBC News

2023年11月10日

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マット・マグラス、マーク・ポインティング、BBC気候変動・科学

2023年が観測史上で最も暖かい1年になることが「ほぼ確実に」なったことが、最新のデータで明らかになった。今年は熱波や洪水、森林火災で多くの死者が出た。

今年の10月が「異例の」高い気温を記録したことから、通年での予想につながった。

欧州連合(EU)のコペルニクス気候変動サービスによると、今年10月の世界平均気温は、これまでの最高記録(2019年)より0.4度高かった。

世界平均気温が更新されるのは5カ月連続で、炭素排出やエルニーニョ現象が原因とみられている。

研究者らは、世界的な高気温は2024年も続くとみている。

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2023年が史上最も暖かい年になることは、もはや避けようがない様子だ。残りの2カ月でこの傾向が覆ることはほぼ難しく、11月も世界的な高気温が続いている。

また、10月の気温が、世界的な高気温の記録に加わった。

2023年末までまだかなりあるが、世界経済が工業化するより前の時期(1850~1900年)に比べて、世界の平均気温が摂氏1.5度以上高かった今年の日数はそれでも、すでに最多を更新した。

7月は特に暑く、過去12万年で最も暑い月だった可能性がある。9月の世界平均気温も、これまでの最高記録を0.5度も上回った。

コペルニクス気候変動サービスによると、10月は9月ほど異例な暑さではなかったものの、この月の最高気温「異例の」幅で超えた。

また、工業化以前と比べると1.7度高かった。

これまでの暖かさを考慮すると、2023年が2016年の前回記録を超え、史上最も暑い年になることは「ほぼ確実」だという。

コペルニクス気候変動サービスのほか、アメリカの海洋大気局(NOAA)やバークリー・アースといった多くの科学機関が、こうした見方を示している。

バークリー・アースの気候科学者ジーク・ハウスファーザー博士は、「今年は突出して記録を更新した月が続いており、この傾向が近く消滅する兆候はまったくない」と言う。

「現時点では、2023年が記録上最も暖かい年になることは、すべてのデータセットにおいて事実上、確実だ。その可能性は99%以上だ」と、ハウスファーザー博士はBBCニュースに話した。

「記録的な人的被害」

今年の記録的な高温がもたらす科学的な影響を、多くの科学者が懸念している。それと共に、現実世界への具体的な影響を指摘する声もあがっている。

インペリアル・コレッジ・ロンドンの気象学者、フリーデリケ・オットー博士は、「この記録的に暑い年が、記録的な人的被害につながっている」と述べた。

「この1年で深刻な熱波や干ばつがこの高気温によってさらに悪化し、数千人の死につながっている。大勢が生計を立てる術や家を失っている。具体的な意味をもつ記録だ」

高気温の主要因は、主に化石燃料の使用による二酸化炭素(CO2)の排出だ。さらに、エルニーニョ現象の拡大がこれに拍車をかけている。エルニーニョ現象では、太平洋の東側で暖かい海水が海面まで上昇し、大気中に暖かい空気を押し出され、気温が上昇する。

エルニーニョ現象はここ数カ月で強まってきているが、ピークにはまだ達していないという。

「今回のエルニーニョ現象は奇妙だ。私たちが経験している暑さの一部は、エルニーニョの増加によるものだけではなく、ここ数年の気温を抑制してきたラニーニャ現象(海を冷却する気象現象)の急激な変化によるものもある」と、ハウスファーザー博士は話す。

今回のエルニーニョ現象がここ数十年のものと異なるのかは、研究者らの間でも不確かだ。1997年や2005年のものよりも、海面が暖かくなっているかもしれないと懸念する声もあるが、その点についてはまだ判断がついていない。

コペルニクス気候変動サービスによると、年初から現在までの世界平均気温は、工業化以前と比べて1.4度高く、今後数カ月も高く推移するとみられている。

コペルニクス気候変動サービスのサマンサ・バージェス副ディレクターは、同サービスと国連のデータを総合すると、2023年は「過去12万5000年で最も暖かい」かもしれないと述べた。

この結論は、気象観測所での観測、気候システムの複雑なコンピューターモデル、そして氷床コアや樹木の年輪などに残る、はるか昔の気候の記録に基づいているという。

11月30日には、国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)が、アラブ首長国連邦(UAE)ドバイで開催される。バージェス博士は、今回の結論が憂慮すべき気候の状況を示していると述べた。

「COP28に向けた野心的な気候変動対策に対する危機感は、かつてないほど高まっている」

世界各地で高気温の影響

10月には、世界各地で平均よりもかなり高い気温が観測された。また、さまざまな異常気象がみられた。

  • イギリスでは10月の気温は平均よりも1度高く、イングランド南部では平均より1.7度高かった。雨量も多く、平均降水確率は例年と比べて40%高かった
  • イタリアの10月の気温は、平均よりも3度高かった。一部地域では大規模な洪水が発生した
  • エルニーニョ現象により、パナマ運河では1950年以来の深刻な干ばつが起きた。乾燥が、この重要な交易路の運営に影響を与え続けている
  • 中東の一部地域でも干ばつが起きている一方、アフリカ東部では洪水で犠牲者が出た

世界中の高温は11月に入っても続き、日本では今月すでに何百件もの最高気温の記録が更新された。東京では7日の気温27.5度に達し、同月の最高気温が100年ぶりに塗り替えられた。

一方、欧州ではギリシャの一部などで、11月に初めて35度を超える気温が観測されている。

このような気温の上昇に伴い、今後数カ月でさらに多くの異常気象が発生することが懸念されている。

例えば、オーストラリアの一部ではすでに山火事の「リスク増大」が警告されている。

(英語記事 Extreme autumn heat sets up 2023 for record

提供元:https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-67355255


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