2023年12月4日(月)

BBC News

2023年11月10日

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イスラエルのシュロモ・カルヒ通信相は9日、パレスチナ自治区ガザ地区で欧米メディアの仕事をしているフリージャーナリスト4人について、イスラム組織ハマスによるイスラエル襲撃を事前に知っていたと非難し、メディア4社に調査を求めた。

カルヒ通信相は、イギリスのロイター通信、アメリカのAP通信、CNN、ニューヨーク・タイムズの報道各社に対し、「あなた方の組織の個人は(中略)おぞましい行動を事前に知っていた」とし、調査を求める文書を送ったことをX(旧ツイッター)で明らかにした

名指しされた各社は、事前に攻撃については知らなかったとしている。

ニューヨーク・タイムズは、「根拠のない告発」はフリージャーナリストを危険な立場に追いやると付け加えた。

ハマスは先月7日、イスラエル南部にかつてない壊滅的な攻撃を仕掛け、イスラエルの民間人と兵士1400人以上を殺害し、240人以上を拉致した。

現地のジャーナリストらは、炎上するイスラエル軍の戦車や、クファール・アザ・キブツ(農業共同体)のフェンスを突破するパレスチナ人、攻撃場面などの写真を報道機関に送った。

カルヒ氏は、攻撃が起きた時にはジャーナリストが現場にいたと主張。「これらのおぞましい瞬間を記録し、事実上、このぞっとする出来事に参加していた」とした。

この非難の前には、親イスラエルのウェブサイト「オネスト・リポーティング」が、ジャーナリストらが現場にいることも「計画の一部」だった可能性があると指摘した。

これを受け、野党党首でイスラエル戦時内閣の一員となっているベニー・ガンツ前国防相は、「大虐殺について知りながら、子どもたちが虐殺されるのを傍観していたジャーナリストはテロリストと同じであり、そのように扱われるべきだ」と、Xに投稿していた

与党リクードのダニー・ダノン議員は、当該のジャーナリストらは攻撃に参加したことを理由に、暗殺対象リストに加えられるだろうとXで書いた。イスラエルのメディアによると、同国ではハマスの軍事部門のメンバーを追跡・殺害する専門部隊が結成されているという。

報道各社は否定

告発された報道各社は、現地ジャーナリストらとは写真の提供について、事前に段取りを整えてはいなかったとする声明を出した。

AP通信は、「攻撃が発生した時、境界にはAPのスタッフは一人もいなかった。境界を越えたAPのスタッフも、いかなる時にもいなかった」と説明。

「フリーランスから写真提供を受ける際には、かなりの手間をかけて真正性と内容について確認している」とした。

同社はまた、イスラエルが非難したジャーナリストの一人、ハサン・エスライア氏とはもう業務上の関係はないとした。同氏は以前、ハマスのガザ地区における指導者ヤヒヤ・シンワル氏と一緒に写っていた。CNNも同氏との協力関係を停止するとした。

ニューヨーク・タイムズは、今回の告発を「虚偽であり言語道断」だと批判。「このような主張は無謀で、イスラエルとガザ地区にいる私たちのジャーナリストを危険な立場に追いやる」とした。

同社はまた、イスラエルが問題視したジャーナリストの一人のユセフ・マスード氏を擁護した。同社によると、ハマスの襲撃があった日、マスード氏は同社の仕事をしていなかった。しかし、「それ以降、私たちのために重要な仕事をした」という。

ロイター通信は、事前に情報を得ていたり、10月7日に「ジャーナリストをハマスに同行させた」りはしていないと述べた。

ジャーナリスト保護委員会(CPJ)によると、今回の戦争が始まってから、少なくとも39人のジャーナリストやメディア関係者が殺害されている。内訳はパレスチナ人34人、イスラエル人4人、レバノン人1人だという。

CPJは、「ガザのジャーナリストたちは、イスラエルによるガザ市への地上攻撃、壊滅的なイスラエル軍の空爆、通信網の寸断、大規模な停電の中で紛争を取材しようとしており、特に高いリスクに直面している」と述べた。

(英語記事 Israel officials accuse Gaza reporters of knowing about Hamas attack

提供元:https://www.bbc.com/japanese/67376490


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