2023年12月1日(金)

BBC News

2023年11月11日

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イスラム組織ハマスの壊滅を掲げるイスラエル軍による地上作戦が続く、パレスチナ自治区ガザ地区の北部で10日、いくつかの病院やその付近で複数の爆発が起きたとの報告があった。イスラエルはガザ市最大の病院の近くで作戦を展開していることを認めた。エマニュエル・マクロン仏大統領は、イスラエルは民間人殺害をやめるべきだと述べた。これに対し、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、非難すべきはイスラエルではなくハマスだと反論した。

現地の様子を捉えた動画では、アル・ランティシ小児病院付近で戦車が砲撃しているのが分かる。複数の市民がこの病院に閉じ込められていると訴えている。

イスラエルは、ガザ市内最大のアル・シファ病院の近くで作戦を実施していることを認めた。

イスラエル国防軍(IDF)の報道官は、イスラエル軍は病院を砲撃しないが、ハマス戦闘員が病院敷地内から攻撃してきた場合には「我々は必要な対応をする」と述べた。

フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、停戦はイスラエルの利益になるとして、イスラエルはガザ地区での民間人殺害をやめるべきだと、BBCに話した。

また、フランスはハマスの「テロリスト」行為を「明確に非難する」とともに、イスラエルの自衛権を認めるとも強調した。

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、世界の指導者たちが非難すべきはイスラエルではなくハマスだと、マクロン氏に反論した。

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こうした中、イスラエルは10月7日のハマスの奇襲による死者数を、これまでの1400人超から「約1200人」に下方修正した。

同国外務省の報道官は、身元不明の遺体の一部は「テロリストのもの」だと考えているとした。

ハマスの奇襲を受けたイスラエルは、ハマスが実効支配するパレスチナ自治区ガザ地区への攻撃を開始した。

ハマスが運営するガザ地区の保健省によると、イスラエルの報復攻撃でこれまでに1万1078人が死亡した。このうち4500人以上は子供で、負傷者は2万7000人を超えているという。

4病院の内外で爆発か、戦車に「包囲されている」

目撃者がBBCに語ったところによると、イスラエル軍は10日、ガザ地区の四つの主要病院、アル・シファ病院、アル・クッズ病院、アル・ランティシ小児病院、インドネシアン病院に接近した。これらの病院の敷地内やその付近で爆発が起きたとの報告がある。

イスラエルは、ハマスがアル・シファ病院の地下にあるトンネルを使って活動していると、繰り返し非難している。ハマスはこれを否定している。

BBCが検証した動画では、ガザ市のアル・ランティシ小児病院で女性が自撮りしながら、病院が戦車に「包囲」され、避難を指示された人たちでいっぱいだと訴えている。

この女性の自撮り動画は、女性の周囲に映る壁やタイル、窓などから、アル・ランティシ小児病院の中で撮影されたものだと分かる。

イスラエル軍、病院に砲撃しないが「必要なことをする」

IDFのリチャード・ヘクト報道官は、IDFは病院を砲撃するつもりはないが、ハマス戦闘員が病院敷地内から攻撃してきた場合には「我々は必要な対応をする」と述べた。

「ハマスのテロリストを見かけたら、殺害する」

「いま現在、アル・シファ病院やアル・ランティシ病院に爆弾を落としていない」と、ヘクト氏派述べた。

自力で歩けない人や点滴を受けている人など、病院にいる患者について対応する計画はあるのかとの質問については、「我々はハマスに対して、住民を南へ移動させるよう告げている」とした。

ガザ地区の病院、「後戻りできない局面に」

赤十字国際委員会(ICRC)は、ガザ地区北部の複数の病院が「後戻りできない局面に達し」、数千人の命が危険にさらされていると警鐘を鳴らした。

パレスチナ赤新月社によると、ガザ市のインドネシアン病院では電気やインターネット、水道が遮断されている。

外科医らは停電の中、救命治療を行うためにたいまつを使わざるを得ない状況だと、パレスチナ赤新月社のスポークスマン、ネバル・ファルサク氏は述べた。

「彼らは、全世界の医療関係者が通常の状況下で対応することさえできないような状況の中で働くことになる」と、ファルサク氏は10日夜、BBCニュースに語った。

また、病院内のすべてのサービスが数時間以内に「中断」されるだろうと警告した。

白旗のようなものを振りながら

BBCが検証したガザ市のアル・ナスル病院で撮影された動画には、杖をつく高齢男性を含む大人や子供が、白い旗のようなものを振りながら、病院から逃れようとしているような場面が映っている。

銃声と、おそらく爆発音と思われる音が聞こえると、人々はゲートから病院へ引き返した。

銃声がどこから聞こえたのかや、誰が発砲したのかは分からない。

BBCは10日に検証したすべての動画について、10日以前の古いコピーが存在するかどうか、インターネット上を探したが見つからなかった。つまり、これらの動画は10日に投稿されたものということになる。

仏大統領、「女性と赤ちゃんの殺害やめて」

フランスのマクロン大統領は10日夜、エリゼ宮(仏大統領官邸)でBBCの単独インタビューに応じ、イスラエルはガザ地区で赤ちゃんや女性を殺害するのをやめなければならないと述べた。

マクロン氏は、イスラエルによる空爆を「正当化する理由はない」とした。

また、イスラエルの自衛権を認めつつ、ガザ地区での「空爆停止を強く求める」と述べた。

一方で、フランスはハマスの「テロリスト」的行為を「明確に非難する」とも強調した。

フランスは、イスラエルやアメリカ、イギリス、そのほかの西側諸国と同様に、ハマスをテロ組織と指定している。

アメリカやイギリスなどの指導者たちにも停戦を求める声に加わってほしいかとの質問に対しては、「彼らがそうすることを願っている」と答えた。

イスラエル首相、「非難すべきはハマス」

イスラエルのネタニヤフ首相は、世界の指導者たちが非難すべきはイスラエルではなくハマスだと、マクロン氏に反論した。

イスラエル軍は紛争から民間人を排除しようとしているが、ハマス側は民間人を人間の盾に利用していると、ネタニヤフ氏は主張した。

そして、「ガザ地区でハマスというISIS(イスラム国)が今日犯している犯罪は、明日になれば、パリやニューヨークや世界中でも行われるだろう」と、声明の中で警鐘を鳴らした。

イスラエル軍、人質解放への取り組みは「複雑」だが進行中

IDF報道官のダニエル・ハガリ少将は、10月7日のハマスによる奇襲で連れ去られた200人以上について、人質の解放を実現するためのさまざまな努力が進行中だと述べた。

人質解放へのプロセスは「複雑」だとしつつ、まだ終わっていないと付け加えた。

「人質を取り戻すための機会を、何一つ逃すつもりはない」

ハガリ少将は、人質解放をめぐる情報については、公式発表にのみ耳を傾けるよう注意を促している。

(英語記事 Firing outside Gaza hospitals, with patients and staff trapped insideMacron urges Israel to stop bombing babies in Gaza

提供元:https://www.bbc.com/japanese/67388580


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