
米連邦捜査局(FBI)と米郵政公社は9日、不審な封筒が少なくとも5州の選挙管理委員会に送られていたと発表した。一部の封筒には合成麻薬フェンタニルが含まれており、「選挙を今すぐ終わらせろ」という警告文も同封されていたという。
不審な郵便物は、ジョージア、ネヴァダ、カリフォルニア、オレゴン、ワシントン各州の選挙管理委員会にあてられていた。4つの封筒にフェンタニルが含まれていたという。一部の郵便物は、宛先に届く前に発見された。
「捜査機関は、他の同様の手紙が配達される前に発見するよう、精力的に動いている」と、FBIと郵政公社は声明で述べた。
フェンタニルは、鎮痛効果がヘロインの50倍は強力な合成麻薬。アメリカでは、フェンタニル中毒による死者数が急増している。
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ジョージア州のブラッド・ラッフェンスパーガー州務長官は、送られてきた郵便物は「国内テロ」で「非難に値する」と述べた。
同州で見つかった不審な郵便物は、フルトン郡の選管事務所を標的にしていた模様。当局が発見し、フェンタニルを検出した。
「フェンタニルは薬だという人もいるが、実際には毒物だ」とラッフェンスパーガー長官は9日、記者団に述べた。「人をたちまち簡単に殺す毒だ。妻と私は5年半前、フェンタニルの過剰摂取で息子を失っている。これがどれだけ毒性の強いものか、私たちは知っている」。
ブレントン・ラッフェンスパーガーさんは2018年、38歳で亡くなった。
ワシントン州のスティーヴ・ホッブス州務長官によると、同州では、キング、ピアース、スカギット、スポケインの4郡の選管事務所に「正体不明の粉状のもの」が入った封筒が送り付けられた。
11月7日の州内選挙結果を選管が集計している最中でのことで、不審な郵便物は「選挙を脅かすテロ行為だ」とホッブス長官は述べた。
同州ピアース郡当局は、送られてきた郵便物の写真を公表。オレゴン州ポートランドの消印で、「選挙を今すぐ終わらせろ」と書かれた手紙が含まれていた。
同様の手紙が同州キング郡にも送られていた。同郡では今年8月の予備選当時、別のフェンタニルを含む手紙が見つかっていた。
AP通信によると、郵政公社はロサンゼルスとサクラメントに送られた不審な封筒を途中で発見し、回収したという。
不審な郵便物の送付先の一つとなったジョージア州フルトン郡の選管は、2020年米大統領選で当時のドナルド・トランプ大統領が繰り返し、開票結果について働きかけ、不正選挙があったと主張を繰り返した場所。
トランプ前大統領は現在、大統領選の結果を覆そうとした罪で、フルトン郡の大陪審に起訴されている。同郡では、選挙結果を覆すため複数人と共謀し、州当局者に職務違反を働きかけたり、偽の選挙人を選定したりと、組織的な犯行を重ねたとされ、州法違反で起訴された。
前大統領は無罪を主張している。
フルトン郡選管のロブ・ピッツ委員長(民主党)は8日、同選管のスタッフは2020年大統領選以来、常に脅されている状態だと話した。
「我々のスタッフに危害を加え、民主主義の流れを妨害し阻止したい人たちがいる」とピッツ氏は言い、自分たちは緊張と注視の「焦点」となるはずの来年の大統領選に向けて準備ができていると述べた。
「今回のこれは自分たちにとって、いい予行演習になった」
(英語記事 Fentanyl-laced envelopes sent to US election officials)