
イスラム組織ハマスの壊滅を掲げ、パレスチナ自治区ガザ地区で地上作戦を続けるイスラエル軍は11日、ガザ地区最大の病院近くでハマスと衝突した。病院のスタッフは、院内に残る患者や避難者が恐ろしい状況の中で身動きが取れなくなっていると訴えている。
ガザ市にある、ガザ地区最大のアル・シファ病院の外科医は、病院では水も食料も電気も底をついたとBBCに語った。
アル・シファ病院付近でハマスと衝突したが、病院は砲撃していないと、イスラエルは主張している。
イスラエルは10日に、同病院の近くで作戦を展開していることを認めていた。いくつかの病院やその付近では複数の爆発が起きたとの報告があった。
NGO「人権のための医師団・イスラエル」によると、アル・シファ病院では早産児2人が死亡し、37人の早産児が命の危機にさらされている。
イスラエルは12日にも、「より安全な病院」への乳児の避難を支援するとした。
病院内部からの報告では、現場が恐怖と混乱に包まれていることがうかがえる。病院付近では定期的に戦闘が起きている。最近手術を受けたばかりの患者は避難できず、埋葬できない遺体が山積みになっているのだという。
この2日間、激しい戦闘の中心地となっているアル・シファ病院には数千人が避難しているとみられている。
イスラエル国防軍(IDF)はハマスがアル・シファ病院の下にあるトンネルを使って活動していると、繰り返し非難している。ハマス側はこれを否定している。
銃声や砲撃音が「絶え間なく」響いている
外科医のマルワン・アブ・サーダ氏はBBCに対し、アル・シファ病院中に銃声や砲撃音が「絶え間なく」響いていると語った。
また、敷地周辺で戦闘が起きており、遺体を埋葬できずにいるとした。
発電機の燃料がなくなり、遺体安置所の冷蔵庫は機能していないという。「遺体を放置することで感染症が流行するのは避けたい」と、同医師は述べた。
NGO「人権のための医師団・イスラエル」によると、停電の影響で早産児2人が死亡した。
「ほかの37人の早産児の生命に、真の危険」が生じていると、同団体は警告した。
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乳児の避難
イスラエル側は、アル・シファ病院は包囲しておらず、避難を希望する人が安全に通行できるよう、病院の東側が解放されているとしている。
イスラエル軍報道官のダニエル・ハガリ少将は、同国は12日にも「小児科にいる人々がより安全な病院へ移動できるよう」支援すると述べた。
病院管理者からの要請を受けて今回の決定に至ったとし、イスラエルは「必要な支援を提供する」と、ハガリ氏は述べた。
モシェ・テトロ大佐は先に、アル・シファ病院近くでハマスとイスラエル軍の衝突が起きたが、病院自体への攻撃はなかったと述べた。
国際慈善団体は、戦闘が起きている場所の近くにある複数の病院について、入院患者が十分な治療を受けられずに死亡するおそれがあると警鐘を鳴らしている。
国境なき医師団(MSF)の調整担当者は、停戦がなければ「これらの病院に残っている患者は全員死亡し、病院は墓場と化すだろう」とBBCに語った。
パレスチナ赤新月社(PRCS)によると、アル・クッズ病院ではPRCSのチームが、患者500人と避難者約1400人とともに病院内で身動きが取れなくなっている。
一方、ガザ地区のより小規模な病院の一つであるアル・ランティシ小児病院からは大半の人が避難しており、わずかな患者とスタッフが中に残っている。
国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)によると、ガザ地区には220万人が暮らし、そのうち150万人以上がイスラエルとハマスの軍事衝突により家を追われた。
ハマスは10月7日にイスラエルを奇襲し、イスラエル側で約1200人を殺害したとされる。その多くは民間人だった。また、200人以上を人質にとった。
ハマスが運営するガザ地区の保健省は、イスラエル軍の報復攻撃でこれまでに、子供4500人以上を含む1万1000人以上が死亡したとしている。