
キリスト教カトリック教会のローマ教皇庁(ヴァチカン)は11日、米テキサス州のジョゼフ・ストリックランド司教(65)を解任すると発表した。同司教は教皇フランシスコの改革に批判的で、そのリーダーシップに疑問を投げかけていた。
ヴァチカンによると、米タイラー教区での調査の結果、ストリックランド司教は職務を「解かれる」ことになった。後任が決まるまでは、オースティン教区の司教が代理を務めるという。
教皇は先に、アメリカの教会指導者の一部について「後ろ向き」だと述べていた。
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教皇はかねて、人工妊娠中絶やトランスジェンダーの人々の権利、同性婚といった社会問題やインクルージョン(包摂性)について、教会の立場を更新しようとしている。
ストリックランド司教はアメリカのカトリック教会において、教皇の改革に対する反対派の先鋒として知られる。
今年7月には、カトリックの教えの「基本的な真実」の多くが危険にさらされていると警告。「神によって定められた」男女間だけの婚姻が「弱体化」させられていると述べた。
また、「神に与えられた否定のしようのない生物学的なアイデンティティーを否定」しようとする動きがあるとし、「混乱している」と批判した。
ストリックランド司教は書簡の中で、「変えられないもの」を変えようとする試みは、教会の取り返しのつかない分裂につながると示唆。変化を求める人々こそ「真の分裂主義者だ」と警告した。
ストリックランド司教はヴァチカンによる調査を受けており、先には辞任を拒否していた。9月には、公開書簡でローマ教皇による解任を求めた。
その書簡の中で同司教は、「子羊の群れを見捨てることになるため、タイラー教区の司教を自ら辞めることはできない」と述べていた。
調査期間中、極右団体「キャンセルされた司祭のための連合」がストリックランド司教を支援する集会を開いていた。
ヴァチカンは、「教皇は昨年6月、タイラー教区で使徒的訪問を命じ」、その結果として解任が決まったと説明。カトリック系のメディアによると、教区内の財務問題についても調査があったという。
トランスジェンダーの人々の洗礼認める
教皇フランシスコは、任期中にカトリック教会をより改革しようと、大きな動きを見せている。
ヴァチカンは9日、トランスジェンダーの人々について、スキャンダルや「混乱」を招かない限りはカトリック教会で洗礼を受けられると発表した。
10月には、カトリック教会が同性カップルを祝福することに前向きな姿勢を表明。この件について質問した枢機卿らに対し、「私たちは、ただ否定し、拒絶し、排除することしかしない、そのような裁判官であってはならない」と述べた。
8月のカトリック教会の「世界青年の日」にポルトガル・リスボンを訪れた際には、教皇は一部の人の後ろ向きな姿勢は「役に立たない」と述べた。
「後ろ向きになることで真の伝統を失い、イデオロギーに頼ってしまう。つまり、イデオロギーが信仰に取って代わってしまう」
教皇は気候変動問題にも積極的に取り組んでおり、11月末に開催される国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)に、教皇として初めて出席する。