2023年12月1日(金)

BBC News

2023年11月13日

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米俳優労組と映画スタジオ側との暫定合意の内容が10日、明らかになった。人工知能(AI)の使用から俳優を守る条項や、インティマシー・コーディネーターを起用する要求などが盛り込まれている。

俳優労組「映画俳優組合-アメリカ・テレビ・ラジオ芸術家連盟(SAG-AFTRA)」は、7月14日にストを開始。映画スタジオやストリーミング各社に対し、賃金やロイヤルティー、年金といった労働条件の改善や、AIの使用に関する保護措置などを求めていた。

SAG-AFTRAの交渉団は今月8日、映画テレビ製作者協会(AMPTP)と暫定的な合意に至ったと発表。労組の発足以来最長となった、118日におよぶストは終了した。

主な合意内容は以下の通り。

  • バックグラウンド俳優に対する報酬引き上げ
  • ストリーミング配信された映画やドラマシリーズが成功した場合の、俳優へのボーナス支払い
  • AIの使用に関して、俳優の生死にかかわらず「事前の同意と公正な報酬」を要求する保護措置
  • 多様な髪質や肌質を持つパフォーマーのため、専門家の雇用を含む、メイクとヘアスタイリングに関する新要件の導入
  • セックスや裸になる場面のある撮影現場へのインティマシー・コーディネーターの起用

インティマシー・コーディネーターとは、性的表現のある撮影に立ち会い、俳優が撮影中に安心でき、敬意を持って扱われているかを監督・指導する専門家。この要件は初めて導入された。

これらの合意内容は10日、労組の全国評議会で86%の賛成で合意内容で承認された。最終的な批准は今週、所属する16万人の組合員が行う予定だ。

合意内容の全容は13日に公表されるという。

交渉主任のダンカン・クラブツリー=アイルランド氏はロサンゼルスで、「我々は組合として、この合意が必要な時に結ばれたと考えている」、「最善のものを達成できた」と述べた。

AIに関する保護措置については、「パフォーマーが守られること、パフォーマーの同意する権利が守られること、公正な報酬を得る権利と雇用の権利が守られることが保証された」と説明した。

映画スタジオはここ数年、AI使用の実験を進めており、今回の交渉では俳優の保護が焦点となった。

AIをめぐっては、その影響で(かつて「エキストラ」と呼ばれていた)バックグラウンド俳優が、最初に失職するのではないかとの懸念があった。クラブツリー=アイルランド氏は、「この合意では、バックグラウンド俳優本人との協議や支払いを免れてデジタルレプリカを使用できない」と述べた。

SAG-AFTRAは、今回の合意は3年間有効で、10億ドル相当の価値につながるとしている。ジェイミー・リー・カーティス氏やザック・エフロン氏といったハリウッドスターも、この合意を歓迎している。

ハリウッドでは、今年5月に米脚本家組合(WGA)もストを開始。9月にスタジオ側と合意に至った。俳優と脚本家のストが同時に行われていたのは、1960年以来63年ぶりだった。

俳優らはスト中、映画の宣伝活動などにも参加できなかった。

米誌デッドラインによると、これらのストにより、カリフォルニア州ではこれまでに65億ドルの経済的損失が出ていたという。

(英語記事 Actors' deal includes pay rises and intimacy co-ordinators

提供元:https://www.bbc.com/japanese/67400367


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