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BBC News

2023年11月14日

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マーク・イートン内政編集長

13日の内閣改造でイギリスの内相となったジェイムズ・クレヴァリー氏は、自身の流儀で職務に当たると約束した。

内相は政府で最も重要な役職の一つだ。警察や移民、そして国家安全保障にも責任を負う。

前任のスエラ・ブラヴァマン氏のレトリックから距離を置きたいかという質問に対し、クレヴァリー氏はこう答えた。

「私は、イギリス国民と私たちの利益を最も守れると思う方法でこの仕事をするつもりだ」

クレヴァリー氏の目の前には仕事が積みあがっている。

一番上にあるのは、ブラヴァマン氏が残していった親パレスチナ派のデモに関する議論だ。イギリスではロンドンを中心に、イスラエルによるガザ空爆に抗議する大規模な集会が毎週末、行われている。首相官邸は、デモ行進を禁止し、テロを賛美する人々の訴追を容易にするため、警察権限を見直すことを即座に望んでいるとみられている。

しかし事はそう簡単にはいかない。抗議活動の禁止を容易にすれば、集会の自由を損なっているとして法廷闘争が起きることはほぼ間違いない。集会の自由は、欧州人権条約で認められ、イギリスの法に組み込まれている権利だ。

抗議活動の禁止は、「国家安全保障上の利益」になるか、「深刻な公的秩序の乱れ」を阻止する時に限り合法とされている。

大規模な抗議活動を取り締まる警察幹部らは、いつ、どこで個人を逮捕するかは運用上の問題だと主張するだろう。

また、治安部隊に抗議参加者をヘイト(憎悪)犯罪の疑いで逮捕させれば、公的秩序が乱れる可能性がさらに高まるリスクもある。

移民問題

15日には、欧州から英仏海峡を渡ってきた亡命希望者の一部を東アフリカのルワンダへ移送する政府計画について、最高裁判所が判断を示す。クレヴァリー氏は、内相就任からわずか2日でこの問題に対処にしなければならない。

もし最高裁がこの計画を阻止し、内務省が負ければ、クレヴァリー氏はただちに危機に直面するだろう。

たとえ政府側が勝利したとしても、ルワンダに送られまいとする亡命希望者たちが個別に司法に訴える可能性がある。

クレヴァリー氏は、リシ・スーナク首相から「公約を守り、(不法移民の)ボートを止め、イギリスの人々を守り、誰もが安全を感じながら暮らせるよう」にしてほしいと明確に伝えられたと話した。

今年に入ってから、2万6000人以上が英仏海峡を渡った。これは昨年に比べてかなり少ないが、イギリス政府は、密入国業者を止める最善の手段は東アフリカへ移送すると脅すことだと考えている。

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新内相はまた、崩壊している亡命システムも引き継いだ。イギリスでは現在、17万5000人が申請の結果を待っている、また、数万人がなお、政府が提供するホテルで暮らしており、1日当たり800万ドルの経費がかかっている。

クレヴァリー氏にとって差し迫ったジレンマのひとつは、こうした人々をホテルから他の宿泊施設に移すとする内務省の計画の一部として、エセックス州ブレーンツリー近郊にあるウィザースフィールドの旧王立空軍基地に、1700人の独身男性移民を収容する案が含まれていることだ。

ここはクレヴァリー氏の選挙区であり、同氏はこれまで基地の使用に反対してきた。

クレヴァリー氏の流儀は、ブラヴァマン氏とは大きく異なる。外相時代、クレヴァリー氏は冷静で外交的な人物に見えた。そして外相という仕事を愛していた。以前の内閣改造で国防相になる可能性が示唆されたとき、クレヴァリー氏は「もし解任されたら、私のオフィスのフローリングに爪の跡が残るだろう」と言っていた。

次の選挙に向けて、犯罪と刑罰に厳しい姿勢を示そうとする政府の決意を反映させるため、クレヴァリー氏にはこれまでとは違ったアプローチが必要だろう。

(英語記事 Protests and asylum fill Cleverly's packed in-tray

提供元:https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-67411635


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