
アメリカの連邦最高裁判所は13日、判事に関する初の倫理規定を発表した。このところ、一部の判事の贈り物や豪華な休暇が報道で取り上げられ、最高裁に厳しい目が向けられていた。
連邦の下級裁の判事に関しては倫理規定が1973年につくられた。しかし、最高裁の判事についてはなかった。
「行動規範」は全9ページ。強制力はないが、判事は「規定と原則」に従うこととされている。
倫理規定を紹介する文章の中で判事らは、これまで明文化された規定がなかったため、自分たちを倫理規定に縛られない存在だと考えているとの「誤解」を招いていたとした。
倫理規定は主要4項目に分かれ、判事の振る舞い、職務の遂行、司法以外の場での活動や金銭が絡む活動などについて概説している。
外部で発言する場合は、「一般市民に不適切と受け止められるか」考慮すべきだと助言。政党や選挙運動に関連したイベントでは問題が生じやすいとしている。
また、裁判の当事者に対して偏見や先入観を持っている場合や、裁判の結果が自らの金銭的利益などに影響を及ぼし得る場合は、その事案には関わるべきではないとしている。
米メディアのプロパブリカは今年、クラレンス・トーマス判事と、裕福な保守活動家ハーラン・クロウ氏との関係について調査報道をした。
トーマス判事は、クロウ氏から毎年、豪華旅行やプライベートジェット機での移動などを提供されていたが、公表していなかった。また、トーマス判事と同居する親戚の私立学校の学費をクロウ氏が負担していたことや、トーマス判事の母親が住む家をクロウ氏が購入していたことも、報告していなかった。
その後、リベラル派のソニア・ソトマイヨール判事が、公のイベントで自分の本を販売するために最高裁スタッフを使っていたことなども明らかになった。連邦議会に対しては、最高裁に関して拘束力のある倫理規定を定めるための法案を可決するよう求める声が出た。
今回の倫理規定で、最高裁判事に対する批判が鎮まることにはならないとみられる。
リベラル系シンクタンク「アメリカ進歩センター(CAP)」は、「この行動規範はまやかしに過ぎず、最高裁にはびこる倫理問題を解決しない」とする声明を発表。
「判事の行動についてshould(すべき)という単語は51回も使われているが、shall(しなくてはならない)、must(同)、may not(すべきではない)は規範の本文に出てこない」と指摘した。
連邦最高裁について多くの著作があるテキサス大学ロースクールのスティーヴ・ヴラデック教授は、「中途半端以上ものではない」と批判。「厳格な倫理規定であっても、それが守られることを保証する手立てがなければ、あまり意味がない」と話した。