2023年12月4日(月)

BBC News

2023年11月15日

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シャイマ・ハリル東京特派員

宝塚歌劇団は14日、劇団員の女性(25)が長時間労働などが原因で自殺したと報じられたことを受けて兵庫県宝塚市で記者会見を開き、劇団員の死に責任を感じているとした。

歌劇団の木場健之理事長は、「大切なご家族を守れなかった」として謝罪。辞任を表明した。

一方、遺族への補償の内容は明らかにしなかった。

女性は9月30日、宝塚市内の自宅マンションの敷地内で死亡しているのが発見された。警察は自殺の疑いがあるとしている。

女性は歌劇団に6年間在籍していた。名前は明らかにされていない。日本では自殺はまだ不名誉とされ、それを理由に遺族が匿名を選んだ可能性がある。

歌劇団は弁護士を中心とした独立した調査チームを立ち上げ、死亡の経緯を調べてきた。この日の記者会見では、いじめやハラスメントは認められなかったとした。

しかし、女性に「長時間の活動と上級生からの指導が重なり、心理的負荷となった可能性は否定できない」とした。

上級生のパワハラあったと遺族

遺族は自殺の原因について、過重な業務や上級生劇団員のパワハラによって「心身の健康が損なわれた」ことだとし、歌劇団側に謝罪と補償を求めている。遺族の弁護士が先週、記者会見を開いて説明した。

弁護士によると、女性は歌劇団側と業務委託契約を結んでいた。時間外労働は1カ月で277時間に上り、政府が定める労災の認定基準を超えていたという。

歌劇団はこの日の会見で、女性の時間外労働は月118時間以上だとした。

遺族はまた、女性が2年前に上級生から額にヘアアイロンを押し当てられ、やけどを負ったと主張している。今年2月に週刊誌がこのことを報じると、歌劇団側は事実無根だとした。

朝日新聞によると、今回の調査チームの報告書は、上級生がヘアアイロンを故意に額に当てたとは確認できなかったとした。

遺族は先週の弁護士の会見の際、声明で歌劇団側について、「常軌を逸した長時間労働により、娘を極度の過労状態におきながら、見て見ぬふりをしてきた」と批判。歌劇団とパワハラをした上級生に、責任を認めて謝罪するよう求めた。

「安全配慮が十分ではなかった」

歌劇団の木場理事長はこの日の会見で、「安全配慮義務を十分に果たしていなかった」と述べた。

遺族に対しては、「大切なご家族を守れなかったことを深くおわびします」とした。

遺族による補償の求めについては、「謝罪と補償はしっかりとしていきたい。残念ながら今は機会を持つことができていない」と述べたと、NHKが報じた。

歌劇団は今後同じようなことが起こらないようにするための対策として、年間興行数を9から8に減らすとした。

厳格な上下関係

日本で最も人気のある劇団のひとつの宝塚歌劇団は、1913年に結成された宝塚唱歌隊がルーツ。

ロマンスもののミュージカルの派手な解釈で、日本ではカルト的な人気を博している。

入団をめぐっては激しい競争がある。劇団内では若い女性の歌手やダンサーらが厳格な上下関係の中で活動している。男役を演じる女性劇団員らが多くの観客を魅了している。

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また、日本の厚生労働省が運営する「まもろうよこころ」が相談先を紹介しているほか、国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所作成の「知ることからはじめよう こころの情報サイト」も、心の健康に関する情報や相談先を紹介しています。厚労省の補助金事業「よりそいホットライン」は相談を受け付けている。

(英語記事 'Overworked' actress death prompts apology in Japan

提供元:https://www.bbc.com/japanese/67423212


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