
ニック・トリグル保健担当編集委員
イギリスの国民保健サービス(NHS)イングランドは15日、2040年までに子宮頸(けい)がんを撲滅するとする目標を発表した。
NHSイングランドのトップ、アマンダ・プリッチャード氏は、ワクチン接種率とスクリーニング検査率を改善することで、今後20年で子宮頸がんになる人がいなくなるだろうとした。
一方で、この目標を達成するため、ワクチン接種とスクリーニング検査を受ける割合を増やす対策が必要だと指摘した。
子宮頸がんは乳がんと共に、44歳以下の女性がなりやすいがんの一つ。毎年イングランドでは2600人が、イギリス全体では3000人が、子宮頸がんと診断されている。
イギリスでは新型コロナウイルスのパンデミック時、地域の図書館やホール、スポーツ施設などでワクチンを追加接種できるように整備したことで、ワクチン接種率が上がった。プリッチャード氏は、この経験を子宮頸がん対策に生かすよう、NHSに指示している。イングランドの一部地域ではすでに、こうした場所での子宮頸がんワクチンの接種が始まっているという。
また、NHSのアプリを改善し、人々が予防接種の履歴を見たり接種予約をしたりできるようにするとした。
子宮頸がんの撲滅には、世界各国が取り組んでおり、オーストラリアは2035年を目標にしている。世界保健機関(WHO)は、患者が10万人あたり4人以下になった状態を子宮頸がんの撲滅と定義している。
WHOは、撲滅のためにはワクチン接種率で90%、スクリーニング検査率で70%に達成することが必要だとしている。
イングランドでは現在、12~13歳の男女が、ヒト・パピローマウイルス(HPV)ワクチンの接種を学校で受けられる。
接種率は女子が86%、男子が81%となっている。
HPVは、子宮頸がんの原因の99%を占める。一方、ワクチンによるHPVの予防効果は90%。
そのため、スクリーニング検査も引き続き、子宮頸がんの予防と早期治療で重要な役割を果たす。スクリーニング検査ではがんを早期発見できるほか、4分の3の確率でがんの進行を防げるとされる。
NHSイングランドでは、25~49歳の女性に対し、3年に1度の細胞診によるスクリーニング検査を無料で提供している。
しかし最新のデータによると、スクリーニング検査を受けられる3人に1人が、検査を受けていない。
こうした状況を受け、自主検査キットの臨床試験を拡大する動きも出ている。
イングランドの子宮頸がん患者は現在、女性10万人あたり9.5人と、目標値の2倍以上。ここ10年ほぼ変わっていない。
しかし2008年にHPVワクチンを少女に接種するようになって以降、このグループでの子宮頸がんは87%減少しているため、今後数年で患者数が減り始めると予想されている。
リヴァプールで行われたNHSプロヴァイダーズの年次総会でプリッチャード氏は、子宮頸がん予防を「可能な限り簡単」にしたいと語った。
「このような重要な、命を救う野望を掲げられることは、本当に記念すべきことだ。子宮頸がんの撲滅はとてつもない偉業だ」
「これまでと同様、市民もワクチン接種や検診の予約に応じることで、その役割を果たすことができる。子宮頸がん撲滅という我々の目標を達成するためには、一人でも多くの人にこの活動に参加してもらう必要がある。どうか遅れないでほしい。それがあなたの命を救うかもしれない」
がん患者の支援団体「キャンサー・リサーチUK」のジュリー・シャープ医師は、子宮頸がんの撲滅は現実的な目標だと述べ、NHSイングランドの方針を全面的に支援すると語った。
一方で、ワクチン接種とスクリーニング検査を受ける人を増やし、人々の行動を妨げている障害を減らすには、目標を定めた活動が必要だと指摘。調査によると、恥ずかしさや過去の悪い体験、予約の難しさ、細胞診が何かを知らないことなどが、障害になっているという。
「この目標は、ワクチン接種と検査プログラムが十分な資源と最新のITインフラに支えられて初めて可能になる」と、シャープ氏は述べた。