2023年11月30日(木)

BBC News

2023年11月16日

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アメリカのジョー・バイデン大統領と中国の習近平国家主席が15日、米カリフォルニア州サンフランシスコ郊外で会談し、軍事対話を再開することで合意した。米中間の高まる緊張を和らげるのが狙い。両首脳の対面での会談は昨年11月のインドネシア・バリ島以来1年ぶり。

首脳会談は、サンフランシスコ郊外にある歴史的な邸宅「フィロリ邸」で行われた。

習主席はアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に出席するため、14日にサンフランシスコに到着していた。

バイデン大統領は会談後、「我々は直接的でオープンかつ明確なコミュニケーションを取る関係に戻っている」と述べた。

また、互いに直接コミュニケーションが取れる連絡線を確立することで、習氏と合意したと明らかにした。

バイデン氏は、コミュニケーション不足は「事故が起こる原因」になるとし、両首脳は「電話を手に取れば、直ちに直接、話を聞くことができる」ようになったと付け加えた。

中国は昨年8月にナンシー・ペロシ米下院議長(当時)が台湾を訪問した後、米中の軍部間の対話を遮断した。中国政府は台湾を自国の領土の一部とみなしており、必要であれば武力で統一すると警告してきた。ペロシ氏の訪台は、過去25年間で最も高位の米政治家によるものだった。

「独裁者」との見方変わらず

バイデン氏は、習氏との間には多くの意見の相違が残っているとしつつ、習氏は「率直」だったと評した。そして、今回の会談は「これまで我々が行ってきた中で最も建設的かつ生産的な話し合いの一つだった」とした。

ただ、バイデン氏は記者会見の壇上から降りる際に、習氏が独裁者だという見方はいまも変わらないのかと記者から問われると、次のように答えた。

「我々とはまったく異なる政治形態に基づく(中略)国を率いる人物という意味で彼は独裁者だ」

バイデン氏は6月にも、習氏を独裁者だと述べ、中国当局が「極めてでたらめで、無責任な」発言だと憤った。

合意内容

両首脳は軍事対話の再開のほか、近ごろの緊張状態の原因となっている分野においても、いくつかの合意に至ったと発表した。

その中には、アメリカで増加している、薬物の過剰摂取による死亡の一因となっている合成麻薬フェンタニルの、アメリカへの流入に対する措置も含まれる。

中国の製造会社は、合成オピオイド(麻薬性鎮痛剤)だけでなく、合成オピオイドを作るための前駆化学物質の供給源でもある。「我々は中国から西半球に流入する前駆化学物質と錠剤プレス機の量を、大幅に削減しようと取り組んでいる」とバイデン氏は述べた。

今回の合意により、中国はこれらの前駆化学物質を製造している企業を直接、標的にすることになる。「人命を救うことになる」と、バイデン氏は記者団に語った。

両首脳は、イスラエルと、パレスチナ自治区ガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスの紛争についても話し合った。バイデン氏は中国側に、イランへの影響力を行使し、挑発的とみなされるような行動の回避を促すよう要請したと、米政府高官は記者団に述べた。

イランはイスラエルがガザ地区への攻撃を停止しなければ、中東地域が「制御不能」に陥るおそれがあると警鐘を鳴らしている

イスラエルは、イエメンの親イラン武装組織フーシ派からも砲撃を受けている。BBCのジェレミー・ボウエン国際編集長は、フーシ派幹部をインタビューし、イスラエルを攻撃するのはイランに指示されているからかと尋ねたが、この幹部は質問に直接は答えなかった。

バイデン氏と習氏は、人工知能(AI)についても政府間対話を始めることで合意した。

両首脳は台湾をめぐる問題についても長い時間話し合った。米政府関係者によると、習氏は台湾について「米中関係で最大かつ最も危険な問題」だと述べたという。

中国、「平等と尊重に基づ」軍事対話を回復

会談後、中国側は「平等と尊重に基づいて」両国の軍部間の対話が回復したと発表した。

習氏は冒頭のあいさつで、「地球は両国が共に成功するのを受け入れるのに十分な大きさだ。一方の国の成功はもう一方の国にとってのチャンスになる」と述べた。「対立は双方にとって耐え難い結果をもたらすことになる」。

今回の首脳会談は非常に待ち望まれていたものだったが、米中双方の関係者は、大きな進展があったのではないかとの期待感に対し、控えめな反応をみせた。

「ここでの目標は、競争を管理し、対立というリスクのマイナス面を回避し、対話のチャンネルを確実に開くことだ」と、米政府関係者は語った。

米中関係は、2月に中国の偵察用気球とみられるものが米本土上空を飛行し、米軍が撃墜したことで悪化した。

その後、アントニー・ブリンケン米国務長官が6月に中国を訪問し、習氏や秦剛外相と会談した。これは、この約半世紀で最も高位の米政府高官による北京訪問だった。

訪中を終える際、ブリンケン氏は米中間にはまだ大きな問題が残っているものの、「今後、私たちがより良いコミュニケーションとより良い取り組みを持てることを望み、期待している」と述べた。

(英語記事 US and China agree to resume military communications

提供元:https://www.bbc.com/japanese/67435322


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