
ロシアの裁判所は16日、スーパーマーケットで値札を反戦メッセージに取り換えたとして、反戦アーティストに遠隔刑務所での禁錮7年の刑を言い渡した。
サンクトペテルブルク出身のサシャ・スコチレンコ被告(33)は、昨年4月に拘束された。今回、ロシア軍に関する「偽情報」を拡散した罪で有罪となった。
スコチレンコ被告の弁護人は、同被告には基礎疾患があることから、刑務所で死亡する可能性があるとして、無罪判決を求めていた。
スコチレンコ被告は昨年、ロシアがウクライナへの全面侵攻を開始して数週間後、サンクトペテルブルクのスーパーマーケットで値札を反戦メッセージに取り換えた。この活動は、フェミニスト団体が呼びかけていたものだった。
取り換えられた値札には、「ロシア軍がマリウポリの芸術学校を爆撃した。中には400人が隠れていた」、「私の曽祖父は、ロシアがファシスト国家になりウクライナを攻撃するために、第2次世界大戦で4年間戦ったわけではない」などと書かれていた。
スコチレンコ被告は起訴内容を認めている。
最終弁論の中でスコチレンコ被告は、反抗的な口調で「もし検察官が、小さな紙切れ5枚で国家や社会の安全が脅かされると考えているのなら、国家と社会に対する検察官の信頼はどれほど低いのか」と述べた。
「私が間違っているとでも、洗脳されているとでも、言いたいことを言えばいい。私は自分の意見と自分の真実の側にいる」
スコチレンコ被告は、ウクライナ侵攻を受けて制定された抑圧的な法律に基づき、「ロシア軍の信用を傷つけた」罪で有罪となった。
この法律は実質的に、あらゆる反戦活動を犯罪化している。
スコチレンコ被告の裁判は、この法律に基づいて行われた最初期のもので、1年半の歳月がかかった。
同被告の弁護人を務めたヤナ・ネポヴィンノヴァ氏は、「初めに、捜査に長い時間がかかった。検察はどこからか、何らかの証拠を見つける必要があった」と話した。
スコチレンコ被告のきょうだいのアナさんはBBCに対し、同被告は「(ロシア)当局が憎むものすべてを象徴している」と話した。
「彼女は芸術的で、もろくて、レズビアンで、ウクライナの名字を持っている」
アナさんはまた、基礎疾患により同被告が刑務所で死ぬ危険性があることを懸念している。スコチレンコ被告はセリアック病と診断されているほか、心臓が2~3秒間停止する心臓疾患も抱えているという。
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ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、ウクライナへの本格的な侵攻と並行して、国内の反体制派に前例のない弾圧を行ってきた。スコチレンコ被告の有罪の根拠となった法律は、プーチン政権の批判者の多くを標的にするために使われてきた。
ロシア人ジャーナリストのマリナ・オフシャニコワさん(44)は10月、欠席裁判で8年半の禁錮刑となった。ロシア国営テレビ「チャンネル1」の編集者だったオフシャニコワさんは2022年3月、生放送中のニュース番組で反戦メッセージを発信。その後、自宅軟禁に置かれていたが、今年2月にロシアを脱出した。
4月には、イギリスとロシアの二重国籍を持つ活動家ウラジーミル・カラ=ムルザ氏が、禁錮25年の刑を受けた。