
イスラエル軍の地上作戦が続くパレスチナ自治区ガザ地区で18日、作戦の中心地となっている同地区最大のアル・シファ病院から、患者ら数百人が避難した。一部の医療スタッフは、避難指示を受けたと話しているが、イスラエル側はこれに反論している。こうした中、北部の避難所などで爆発があり、合わせて80人が死亡したと、ガザ地区の保健当局は発表した。
銃声が鳴り響く中、アル・シファ病院から数百人が避難し、がれきだらけの道を徒歩で移動する様子が確認されている。
こうした中、イスラム組織ハマスが運営するガザ地区の保健省は、同地区北部ジャバリアで2度の爆発があり、合わせて80人が死亡したと発表した。
ジャバリアには国連が設置した避難民キャンプがある。学校が避難所になっているところもあるが、イスラエルはBBCに対し、そうした学校を攻撃したかどうかは確認できていないが調査中だと述べた。
アル・シファ病院は「死の地帯」
世界保健機関(WHO)率いる国連合同チームは、イスラエル軍に占拠され、患者らが避難したアル・シファ病院を訪問。「死の地帯」だと表現した。
合同チームは1時間にわたって病院を調査し、砲撃や銃撃の証拠のほか、病院入り口にある集団埋葬地を確認した。80体の遺体があると説明を受けたという。
イスラエル軍が避難命令を出した後も、院内には重篤な患者300人が残っている。
合同チームは、残っている患者とスタッフをガザ地区のほかの施設に緊急避難させようとしているという。
院内にいるジャーナリスのカデル氏はBBCに対し、「動けない患者とごく少数の医師」だけが残っていると語った。
「我々は両手をあげて、白い旗を掲げた」
「昨夜(17日)はとても大変な状況だった。爆発音と銃声が恐ろしかった。複数のブルドーザーで病院の庭に穴を掘り、いくつかの建物を壊していた」
ハマスが運営する保健省は先に、院内には120人の患者と、多くの早産児が残されているとしていた。
イスラエル軍は避難命令を否定
イスラエル国防軍(IDF)はアル・シファ病院に避難命令は出しておらず、「安全なルート」を使った避難を希望する病院長の要請に同意したとした。
「IDFはいかなる時点においても、患者や医療チームの避難を命じたことはない。実際、医療避難の要請があればIDFがそれを円滑に進めることを提案した」と、IDFは声明で述べた。
イスラエル当局から避難を命じられたという、アル・シファ病院のラメズ・ラドワン医師は、病院は「悲惨」な状況だと話した。鎮痛剤も抗生物質もなく、「傷口から虫が出てくる」患者もいるとした。
IDFはここ数日、「標的を絞った対ハマス作戦」の一環としてアル・シファ病院を襲撃している。病院の地下ではハマスが主要な作戦を実行していたと主張しているが、そのことを示す実質的な証拠はまだ提示していない。
IDFはガザ地区北部の住民に南部へ避難するよう指示しており、南部ハンユニスには何千人も集まっている。ところが今度は、ハンユニスにいる人々に対しても避難を促し始めている。
現地の保健当局によると、ハンユニスでは18日、集合住宅がイスラエルのミサイル攻撃を受け、26人が死亡した。
イスラエル側はこの件についてコメントしていない。
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避難所などに攻撃か
BBCヴェリファイ(検証チーム)がジャバリアのアル・ファクオラ学校で撮影されたと確認した動画には、女性や子供を含む多くの人が重傷を負い、建物のさまざまな場所で横たわって動かなくなっている様子が映っている。
映像では20人以上の死傷者が確認でき、その約半数が建物1階部分の特定の部屋の中にいる。部屋自体がかなりの被害を受けているように見える。
国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)のフィリップ・ラザリーニ事務局長は、「家を追われた何千人もが身を寄せている」同機関が運営する学校のひとつで、「多数の人が殺害され、負傷している恐ろしい映像や画像」を確認したと述べた。
「このような攻撃が当たり前になってはいけない。止めなければならない」
一方、ハマスが運営するガザ地区の保健省は、ジャバリアの別の場所で、イスラエル軍の空爆によって一家族の30人以上が死亡したと発表した。
IDFはこうした報告について即座にコメントしていない。しかし、ハマスを標的とした、ジャバリアを含むガザ地区での作戦を拡大しているとしている。
ハマスが運営する保健省は、ガザ地区での死者が1万2300人に達したとしている。また、2000人以上ががれきの下敷きになっているおそれがある。
(英語記事 Hundreds leave Gaza hospital as many feared killed at UN shelter/Israel orders Khan Younis evacuation in south Gaza)