
生成AI(人工知能)のチャットGPTを開発した米企業オープンAIのサム・アルトマン最高経営責任者(CEO、38)が17日、解任された。テクノロジー業界に衝撃が広がっている。
オープンAIの取締役会は、アルトマン氏の指導力に対する信頼を失ったとする声明を発表。同氏が「一貫して率直なコミュニケーション」を行わず、取締役会の責任遂行を妨げているとした。
同氏が何について率直でなかったのかは明らかにしていない。
アルトマン氏はオープンAIの共同設立者で、業界で最も注目を集める一人だった。
同氏はソーシャルメディアに、同社での仕事を愛していたと投稿。「私個人にとって、そして望ましくは世界にとっても、ちょっとした変革だった。なにより、才能ある人々と仕事をするのが大好きだった」と書いた。
オープンAIの共同設立者グレッグ・ブロックマン氏によると、取締役6人でなる取締役会のビデオ会議が急きょ開かれ、アルトマン氏が解任されたという。
その数分後、ブロックマン氏も取締役を解任されたといい、両氏とも「ショックを受け、悲しんでいる」という。
オープンAIは現在、絶頂期にあるとされる。ほぼ1年前に公開したチャットGPTは数百万人に利用されている。チャットGPTはユーザーに対し、人間がつくるような文章や画像、動画などで応答するのが特徴。
アルトマン氏は、オープンAIの躍進を代表する存在であり、業界の顔として役割も果たしてきた。
米議会の公聴会で証言し、新たな技術が生み出す機会とリスクについて議論した。今月初めにイギリスで開かれた世界初の「AI安全サミット」にも出席した。
日本も何度か訪れており、4月には岸田文雄首相と面会した。
米シリコンバレーの大物らも同氏を支援してきた。グーグルの元CEOのエリック・シュミット氏は、アルトマン氏を「私のヒーロー」と呼び、「私たちの世界を永遠に変えた」とソーシャルメディアに投稿した。
オープンAIは2015年に非営利団体としてスタートした。2019年に再編され、現在はマイクロソフトの巨額投資を受けている。
数週間前には、株式の投資家への売却について交渉が進められていると報じられた。総額は800億ドル(約12兆円)を超えるとされた。
同社は、取締役らは株式を持っていないとしている。
取締役会がアルトマン氏の後任を探す間、ミラ・ムラティ最高技術責任者(CTO)が暫定CEOを務めると、同社は発表した。
BBCのゾーイ・クラインマン・テクノロジー編集長は、オープンAIの取締役会がアルトマン氏について、「一貫して率直なコミュニケーション」を取らず、その結果、同氏のリーダーシップへの「信頼を失った」としたことに着目。
その行間からは、アルトマン氏が何かを言った、もしくは何かを言わなかったことがうかがえるとし、何らかのきっかけでそれが判明したようだとした。また、取締役会の言葉遣いは非常に強烈で、ほとんど個人的にも聞こえるとした。
そして、うわさは渦巻いているが、今のところさらなる事実はわかっていないとした。
(英語記事 AI boss Sam Altman ousted after board loses confidence/The extraordinary firing of an AI superstar)