
パレスチナ自治区ガザ地区のイスラム組織ハマスによるイスラエル奇襲で人質となった人々の家族や友人、支援者らが18日、イスラエル政府に人質の解放を優先するよう求め、西部の主要都市テルアヴィヴからエルサレムへデモ行進した。
参加者らは、エルサレムに到着後、ベンヤミン・ネタニヤフ首相の公邸前で抗議デモを行った。
ネタニヤフ氏は人質の解放を実現するために十分な行動を起こしていないと批判されている。
アメリカのジョー・バイデン大統領は先に、イスラエルとパレスチナの2国家共存が唯一の解決策だと述べている。
10月7日のハマスによる攻撃で人質にされた推定240人のうち、これまでに解放されたのは4人にとどまっている。そのほか、イスラエル軍の地上作戦でイスラエル兵1人が救出されている。
イスラエル軍は今週、人質に取られていたイエフディト・ワイスさん(65)と、イスラエルの女性兵士ノア・マルシアーノさんの遺体をガザ地区で発見したと発表した。
人質の家族、「答えを求めている」
12歳の息子を含む家族2人が、イスラエル南部のキブツ(農業共同体)ニル・オズから連れ去られたというアリ・レヴィさんは「私たちは答えを求めている」と話した。
「子供たちが43日間も誘拐されたままなんて、普通ではありえない。政府が何をしているのかわからないし、情報もない」と、レヴィさんはAFP通信に語った。
義理のきょうだいと12歳のおいが拘束されているというドヴォラ・コーエンさん(43)は、「政府には、彼らを私たちのもとに連れ戻してほしい」と述べた。
ネタニヤフ首相は18日夜の記者会見で、「現時点で人質解放に関する取り決めはない」とし、「何かいうべきことができたら、また報告する」と付け加えた。
また、ハマスとの戦闘における目標は第一にハマスの壊滅、第二に人質の返還、第三にガザ地区からの脅威の排除だと述べた。
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地元メディアによると、テルアヴィヴの北に位置するカイザリアでは18日、約400人がネタニヤフ首相の辞任を求めて抗議デモを繰り広げた。
抗議者が手にしていた掲示物には、「軍だけを非難する者に、軍を指揮する資格はない」と書かれたものもあった。
ネタニヤフ首相は先月末、ハマスのイスラエル侵入を防げなかったとして、軍や安全保障担当の高官を非難する文章をソーシャルメディアに投稿し、後に謝罪した。
2国家共存が唯一の解決策と
こうした中、アメリカのバイデン大統領は18日に米紙ワシントン・ポストに掲載された寄稿の中で、イスラエルとパレスチナの2国家共存が「イスラエルとパレスチナ双方の人々の長期的な安全を確保する唯一の方法」だと述べた。
「自由や機会、尊厳を等しく享受しながら、二つの民族が隣り合って暮らすという2国家共存の解決策こそが、平和への道だ」とし、それを実現するには「イスラエル人とパレスチナ人のコミットメント」が必要だと付け加えた。
ハマスについては、「破壊のイデオロギー」があると非難した。
この寄稿は、政治家としてのキャリアを通して2国家共存に反対してきたネタニヤフ首相に向けられたものとみられる。
ネタニヤフ首相が政権を維持できるかは、国内の強硬派の支持を得られるかにもかかっている。強硬派は、ヨルダン川から地中海までの地域全体について、神からユダヤ人に与えられたもので、そのすべてがイスラエルの領土になるべきだと信じている。
ネタニヤフ首相は、イスラエルは「当面の間」、ガザ地区における「全体的な軍事的責任」を維持していかなければならないとしている。
バイデン大統領は、イスラエルとハマスの戦闘終了後、ガザ地区とヨルダン川西岸地区はパレスチナ自治政府が統治すべきだと主張。米政府はヨルダン川西岸で民間人を攻撃する「過激派」に対してビザ発給を禁止する用意があるとしている。