
イスラエル軍は19日、パレスチナ自治区のイスラム組織ハマスによって10月7日に人質に取られた人々が、ガザ地区最大のアル・シファ病院に連れて行かれた場面だとする映像を公開した。また、同病院で人質の兵士が殺害されたと主張した。
イスラエル軍のダニエル・ハガリ報道官は記者会見で、ハマスがイスラエル南部を急襲した日の朝に、ガザで最も近代的なアル・シファ病院の監視カメラが撮影したとする映像を公開した。急襲ではイスラエル人約1200人が殺害され、240人以上が人質に取られた。
映像では、人質とみられる2人が、ガザ市にある同病院に運び込まれている。1人は抵抗しているように見え、もう1人は担架に乗せられている。
映像には10月7日の日付が入っており、武装した男性らも映っている。
ハマスが運営するガザ地区保健当局は、この映像が本物か確認できないとした。
BBCもこの映像を検証できていない。
ガザ市などで攻撃を続けるイスラエル軍は、アル・シファ病院の地下にハマスが大規模な司令部を構えていたと主張しており、それを立証するよう圧力がかかっている。
ガザ地区保健当局は19日、先月7日以降のガザでの死者数が1万2300人に上ったと発表した。さらに2000人以上ががれきの下に埋もれている恐れがあるという。
人質兵士を病院で殺害と
イスラエル軍のハガリ報道官はまた、人質に取られた同軍のノア・マルシアーノ中尉(19)について、アル・シファ病院で殺害されたと主張した。同中尉は先に、ガザで遺体が確認されている。
報道官によると、同中尉はハマスによってアル・シファ病院近くの隠れ家に連れ去られた。その後、イスラエル軍の空爆で命に別条がない程度のけがを負い、同病院に運ばれた。だが、「ハマスのテロリスト」によって殺害されたという。
ハマスはマルシアーノ中尉について、イスラエル軍の空爆で殺害されたとしている。同軍は今月9日に空爆を実施したことを認めている。
これとは別にイスラエル軍は、アル・シファ病院の敷地内でハマスの司令部に続くトンネルを発見したと発表した。ハマスはこれを否定している。
早産児31人が南部の病院に
アル・シファ病院にいた早産の新生児31人が19日、ガザ南部ラファの病院に移された。世界保健機関(WHO)は同病院の状況を「死の地帯」だと呼んでいた。
アル・シファ病院からは、患者ら数百人が18日、避難した。だが、重篤な患者約300人と早産児が残されていた。
同病院は現在、イスラエル軍の管理下にある。
赤新月社は19日、国連と連携して早産児を避難させた。
WHOのテドロス・アダノム・ゲブレイエスス事務局長は、赤ちゃんは「非常に具合が悪い」と説明。「極めて厳しく、危険度の高い条件下」でラファに移送され、「新生児集中治療室で緊急治療を受けている」と述べた。
ガザ地区の病院の総責任者を務めるモハマド・ザクート医師は、一部の赤ちゃんに脱水や、不衛生な水による胃炎がみられたとAP通信に話した。医薬品不足で敗血症になったり、保育器に入れないことで低体温症になったりする赤ちゃんもいたという。
赤新月社の広報担当は、早産児の親にはイスラエル軍の空爆で殺害された人もいるとBBCに話した。BBCはこれを確認できていない。
この広報担当者によると、生き残っている親は赤ちゃんの避難前にガザ市を離れるよう命じられており、現在どこにいるか不明だという。
ガザ保健当局は、ラファの病院で赤ちゃんと再会するよう、フェイスブックで親に呼びかけた。
イスラエルはこの件についてまだコメントしていない。これまで、赤ちゃんの「より安全な病院」への避難を支援するとしていた。
アル・シファ病院のモハメド・アブ・セルミア院長は、医療スタッフと患者が「この荒廃した場所から去る」のを支援するよう、WHOと国連に求めた。
WHOは、安全な通行の保証が確保され次第、同病院に残っている患者とスタッフを連れ出すことを計画しているとした。
同院長は、病院にはスタッフ25人ほどが残っているが、水も電気もなく、数百人の患者を適切に治療することは不可能だと、BBCアラビア語に説明。
「この病院は現在、真のゴーストハウスだ」、「救急病棟には死体が散乱し、患者が悲鳴を上げ、医療スタッフはなすすべもない。一方で(イスラエル)軍は病院内を自由に歩き回っている」と話した。
(英語記事 Israel says CCTV shows hostages at Gaza hospital/Premature babies evacuated from Gaza's al-Shifa)