
ロシアの強硬主戦派で、政府のウクライナ侵攻戦略を批判してきたイーゴリ・ギルキン被告(52)が、来年予定されている大統領選にウラジーミル・プーチン大統領の対立候補として出馬する意向を示した。
「イーゴリ・ストレルコフ」としても知られるギルキン被告は19日、支持者らに向けた書簡をメッセージアプリ「テレグラム」内で公表。勝者がすでに判明している「でっちあげ」の選挙を混乱させたいと発言した。
この「勝者」はプーチン大統領を指していると広く受け止められている。プーチン氏はまだ再出馬を公言していない。
ギルキン被告は今年7月、過激主義の疑いで拘束・訴追されたが、罪状を否認している。
書簡の中でギルキン被告は、「現在のロシア情勢において、大統領選挙に参加することは、トランプの達人とテーブルにつくようなものだということはよく理解している」と述べた。
しかし、自分の出馬によって愛国的な勢力が団結し、ロシア政府による「ただ一人の勝者がすでに分かっている」選挙計画を阻害できるだろうと語った。
「それが内外の脅威に直面する我々が団結できるチャンスだ」と、ギルキン被告は話した。
その上で、自分の出馬は認められないだろうとしながらも、支持者たちに選挙活動本部を設置し、立候補のための署名集めを始めるように求めた。
ギルキン被告の支持者らはロイター通信に対し、同被告に対する刑事捜査が12月18日にまで延長されたと述べた。また、ギルキン被告はまだ有罪判決を受けていないことから、理論上は選挙に出馬できるとした。
ロシア連邦保安庁(FSB)の情報将校だったギルキン被告は、ロシアによる2014年2月からのクリミア併合で主要な役割を果たした後、ウクライナ東部でロシアが後押しする武装勢力を率いた。
また、2014年7月にオランダ発のマレーシア航空機が撃墜され乗客乗員298人が死亡した事件に関与したとして、オランダの裁判所が昨年11月に終身刑を言い渡した被告3人の1人でもある。
ウクライナ侵攻も支持しているものの、戦況の膠着(こうちゃく)に伴い、ロシア軍と最高司令官のプーチン大統領を激しく批判。より効果的に戦わなければ、ロシアは革命や内戦にさえ直面すると繰り返し警告した。
過激主義の罪で有罪となった場合、ギルキン被告には最長で禁錮5年が言い渡される可能性がある。
今年6月に民間軍事会社「ワグネル」のエフゲニー・プリゴジン氏が反乱を起こし、失敗して以降、ロシア当局は、ウクライナでの戦争で強硬なアプローチを求めて政府を批判するナショナリストらを弾圧してきた。
プリゴジン氏は8月に航空機事故で死亡したが、墜落の原因は明らかになっていない。
ドミトリー・ペスコフ大統領報道官は17日に掲載されたインタビュー記事で、プーチン氏に次期大統領選に出馬してほしいと語った。
プーチン氏は2000~2008年に大統領を2期務めた後、ドミトリー・メドベージェフ大統領の政権で首相となった。その後、2012年に任期が6年となった大統領に復帰。現在で通算4期目となる。
2020年の憲法改正により、来年の大統領選で5選された場合、プーチン氏は2036年まで大統領の地位にとどまることになる。