
生成AI(人工知能)のチャットGPTを開発した米企業オープンAIの最高経営責任者(CEO)を解任されたサム・アルトマン氏(38)が19日、同社にいる自らの写真をソーシャルメディアに投稿した。同氏をめぐっては、復帰の見通しが報じられていた。
アルトマン氏は、来客者用のIDパスを手にした写真をX(旧ツイッター)に投稿。「これを着けるのは最初で最後だ」と書いた。
オープンAIの共同創業者のアルトマン氏は17日、取締役会によって解任された。指導力への信頼が失われたとされた。
ところが翌日には、投資家や従業員らがアルトマン氏の復帰を望んでいると報じられた。
テクノロジー系ニュースサイト「インフォメーション」は、アルトマン氏とグレッグ・ブロックマン氏が19日、オープンAIのサンフランシスコ本社に招かれ、関係者と協議したと伝えた。ブロックマン氏は同社の共同創業者で、17日に社長を辞任していた。
BBCはオープンAIにコメントを求めている。
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アルトマン氏は、急成長する生成AI分野で最も影響力があると目されている1人。解任をめぐっては業界に衝撃が広がった。
同社の取締役会は17日の声明で同氏について、「一貫して率直なコミュニケーション」を取らず、「取締役会の責任遂行を妨げた」と非難した。
同氏が何について率直でなかったのかは明らかにしなかった。
飛び交う憶測
アルトマン氏をめぐって何が起きているのかは、はっきりしない。だが、同氏がライバル会社を設立し、オープンAIの優秀なスタッフを連れ出すことを、同社関係者らが恐れた可能性はある。
同社は860億ドル(約12兆8200億円)規模の株式売却を予定しており、それに影響が及ぶとして、同社の従業員や元従業員が解任に怒っているとする報道も出ている。
英紙フィナンシャル・タイムズによると、ベンチャーキャピタルの支援者たちや、オープンAIに100億ドルを投資している米マイクロソフトも、アルトマン氏の復帰を求めているという。マイクロソフトは自社のアプリケーションにオープンAIの技術を組み込んでいる。
アルトマン氏がCEOに復帰すれば、新たな取締役会の設立を要求するだろうとの憶測もある。
投資会社ウェドブッシュ・セキュリティーズのダン・アイヴズ氏は、アルトマン氏の復帰を信じているとBBCに説明。「取締役会は明らかにやりすぎた。アルトマンを追い出そうとした点で、ほぼクーデターと呼べる。だが、これは裏目に出るだろう」と述べた。
そして、「取締役らは24時間以内に辞めさせられ、アルトマンが戻ってくるだろう。彼はAIの申し子だ。マイクロソフトや他の投資家らは、そうあり続けることを望んでいる」とした。
オープンAIは現在、絶頂期にあるとされ、投資が殺到している。ほぼ1年前に公開したチャットGPTは数百万人に利用されている。
アルトマン氏は、オープンAIの躍進を代表する存在であり、業界の顔として役割も果たしてきた。
米議会の公聴会で証言し、新たな技術が生み出す機会とリスクについて議論した。今月初めにイギリスで開かれた世界初の「AI安全サミット」にも出席した。
日本も何度か訪れており、4月には岸田文雄首相と面会した。
米シリコンバレーの大物らも同氏を支援してきた。グーグルの元CEOのエリック・シュミット氏は、アルトマン氏を「私のヒーロー」と呼び、「私たちの世界を永遠に変えた」とソーシャルメディアに投稿した。