2024年2月26日(月)

BBC News

2024年1月30日

フランク・ガードナー、BBC安全保障担当編集委員

アメリカ政府がジレンマに直面している。

ヨルダンの米軍基地が28日に攻撃され死傷者が出たことについて、ジョー・バイデン大統領は強力な報復措置を誓った。しかし、アメリカにとっての課題は、抑止と激化の適切なバランスを見つけることだ。

断固とした態度を示さなければ、弱腰というメッセージを送り、さらに攻撃を招くだけだ。逆にあまりに強硬に行動すれば、イランとその友好国から、いっそう激しい反応を引き起こしかねない。

では、どんな選択肢があるのか。それはどう機能するのか。

アメリカにはすでに、多くの「棚上げ」状態の軍事的な選択肢がある。国防総省が中央情報局(CIA)や国家安全保障局(NSA)からの情報も使って作成したものだ。いずれも国家安全保障会議と政策立案者らに提示され、大統領が最終的に決定し、実行される。

選択肢1:イランと関係のある基地と司令官らを攻撃

これは最もわかりやすい選択肢で、これまでも使われてきた。

イラクとシリアには、イランが支援する無数の武装勢力の基地、武器庫、訓練施設が多数存在する。その戦闘員は、イラン革命防衛隊(IRGC)のコッズ部隊によって訓練され、兵器や資金の提供を受けているが、必ずしもコッズ部隊が指揮するわけではない。

アメリカは、そうした武装勢力がどのような組織で、どこにいるのか把握している。精密誘導ミサイルを使えば、アメリカは難なく各勢力の基地を攻撃できるが、これまでのところそれは武装勢力への抑止として機能していない。昨年10月7日以降、中東地域の米軍基地への攻撃は170回を超えている。

今回のヨルダンの米軍基地に対する攻撃は、「イラクのイスラム抵抗勢力」を名乗るグループが実行したと主張している。

このグループ名は、イランが支援する武装勢力の総称だ。皮肉なことに、その一部は以前、アメリカと同じ側に立ち、中東地域での共通の敵であるイスラム国(IS)と戦った。それら武装勢力は現在、イランと共通の目標をもっている。イラクとシリアから米軍を追い出し、イスラエルへの軍事支援に関してアメリカを懲らしめるというものだ。

選択肢2:イランを攻撃

これは、きわめて大規模な軍事行動の激化を意味するだけに、アメリカが軽々しく検討するようなものではない。

アメリカが報復として、イランの主権領土にある目標を攻撃する可能性は、考えられないわけではないが、極めて低い。

アメリカもイランも本格的な戦争は望んでいないし、そう表明している。イランの対応としては、経済面で重要なホルムズ海峡の閉鎖を試みることが考えられる。同海峡は、世界の石油とガスの20%が通り抜ける。世界経済は壊滅的な影響を受けるだろう。物価が上昇し、今年11月の米大統領選でバイデン氏が再選される可能性をほぼ確実に低下させるだろう。

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ひとつの代替案として、イラクやシリアにいるIRGCの上級司令官を狙うというものがある。

これには前例がある。最も顕著なのは、2020年にドナルド・トランプ大統領(当時)が、IRGCのコッズ部隊のカセム・スレイマニ司令官をバグダッドでドローン(無人機)攻撃によって殺害するよう命じたことだ。ただ、これも事態のエスカレーションとみなされ、イランの危険な反応を招く恐れがある。

選択肢3:報復しない

アメリカの権力者たちの中には、イラン側を攻撃するのは、現在の中東情勢の緊張を考えれば無責任であり、大統領選の年に実施するのは特にそうだとの主張がある。

国防総省で中東を担当する米中央軍(CENTCOM)は、イエメンの反政府武装勢力フーシ派による紅海とアデン湾での船舶攻撃への対処で、すでに手一杯の状態だ。紛争を拡大させないでほしいという、中東地域の友好国からの願いにも、耳を傾けるだろう。

しかし、報復しないという考えは、これまでのアメリカの抑止政策は失敗していると主張する人々や、基地を攻撃した者たちへの厳しい反撃をためらえば、相手の攻撃を強めるだけだと言う人々に打ち消される可能性が高い。

こうしたことはすべて時間的な要因が絡む。アメリカの軍事的対応の急激な強化は、長期的にみれば必要ない、または価値がない、と主張する人もいるだろう。

まず言えるのは、イランの支援を受ける武装組織による攻撃は、イスラエルとハマスによるガザ戦争の前からあったということだ。ただ、昨年10月7日以降はそれが急増した。イスラエルによるガザ攻撃が終結すれば、中東地域の緊張は緩まるかもしれない(イスラエルはそれはまだ何カ月も先のことだと警告しているが)。

次に言えるのは、ワシントンの一部で、アメリカの中東における軍事的足跡を減らすべきだという声が大きいということだ。トランプ氏は大統領在任中、ISの復帰を阻止しようとするクルド人勢力を支援していたシリアから、米軍を全面撤退させようとした。だが、軍と情報機関のトップらに説得され、これを思いとどまった。

もしもトランプ氏が来年ホワイトハウスに戻り、イラクとシリアにおけるアメリカ軍のプレゼンスを縮小すると決めれば、イランはそれで自動的に、望む状態を手にする可能性が高い。

(英語記事 What options does US have to respond to Jordan attack?

提供元:https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-68137507


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