2024年7月23日(火)

BBC News

2024年7月8日

マーク・ローウェン、BBCニュース

氷の上にはシャンパンが置かれ、ジャズが低音で流れていた。パリのヴァンセンヌの森にあるこのパビリオンで、極右政党「国民連合(RN)」は勝利集会となるはずだったイベントの準備を進めていた。

世界中から何百人ものジャーナリストが集まり、探知犬がパーティーの警戒に当たっていた。権力の入り口のパーティーになると、誰もが思っていた。第2次世界大戦後のフランスで初めて、極右政党が政権与党になるとみられていた。

しかし、7日投開票の国民議会(下院)選挙の決選投票で、出口調査の結果が発表される午後8時が迫ると、ムードは変わりだした。党幹部らは、得票が足りなかったようだとひそひそ声で話した。神経質そうに視線が交わされ、グラスは半分飲み物が入っているのではなく、半分空になっているように見えた。

そしてスクリーンに結果が表示された。国民連合は、「左派連合」と、エマニュエル・マクロン大統領率いる中道の「与党連合」に敗れて3位に転落したというものだった。人々はぼうぜんとし、静まり返った。その後、気勢を上げようと、党支持者らがまばらに拍手を響かせた。

「悲しく、がっかりし、この結果に打ちのめされている」。フランス国旗を握りしめていたロサ・ガヴェ氏は言った。「私たちは、政権奪取の邪魔をするマクロン率いる不誠実な同盟の犠牲者だ」。

彼女の言う「同盟」とは、協定に近いもので、国民連合に反対する勢力が先週結んだ。国民連合がリードし、三つどもえの争いとなっている選挙区の多くで、3番手の候補が辞退し、極右の当選を阻止するのに最適な候補に有権者の支持を集めようというものだった。これは功を奏した。フランスではよくみられる選挙戦術だが、それでも国民連合の怒りを買った。

首相になることを望んでいた国民連合のジョルダン・バルデラ党首(28)が会場に到着すると、人数が減った参加者たちから歓声が上がった。

バルデラ党首は「何百万人ものフランス国民から、自分たちの考えを政権に反映させる可能性を奪うことは、フランスにとって決して存続可能な運命とはならない」と述べた。

同党首はまた、マクロン大統領がフランスを不安定な方向へ、そして「極左」の腕の中へと押しやっているとして非難した。「極左」とは、左派連合の中で最も多くの議席を獲得した「不屈のフランス」に言及したものだ。

続いて、国民連合の指導者マリーヌ・ル・ペン氏が登場した。国政を握るという彼女の夢は、実現寸前でまたも妨げられた。支持者らから「マリーヌ、大統領」という声が上がるなか、彼女は記者たちに囲まれ、数人の記者が押し倒された。

「潮は満ちつつある。私たちの勝利は遅れただけだ」とル・ペン氏は言った。そして、マクロン大統領の姿勢を「どうしようもない」と評した。

中道を復活させ、右派と左派の橋渡しをすると公約して政権に就いたマクロン大統領は、フランス国民を二極化させた。国民連合の支持者の多くは、第1回選挙での勝利が第2回選挙で政権奪取につながらなかったことをいたく残念に思うだろう。だが、前回の議会選挙から大幅に議席数を増やしたことに喝采を送り、いつか自分たちの時代がやってくると確信することだろう。

急速に人々の姿が消えていくダンスフロアでは、国民連合の支持者マッテオ・ジアマレシ氏がシャンパングラスを手に、「フランスは最悪の連合を選んだ」と話した。

「私たちがいま言っているのは、フランスに未来への希望を与えようということだ」

国民連合は、左派連合を軸とした政権の退場を待つことになる。政権内でやがて分裂と不和が生じ、ル・ペン氏を利することになると信じている。そして2027年大統領選挙で、ル・ペン氏が「政権奪取を阻まれれば、こういうことになる」と言うことができるだろうと信じている。

どんな政権が誕生するかは、まだかなり不透明だ。

この先、過半数議席を握る政党がない「宙づり議会」と、議会が不機能に陥る恐れが待ち受けている。フランスは政治的に未知の世界へと突入した。それは世論調査が予測したものではなかった。

(英語記事 France's far right 'sad and disappointed' over election result

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/c6p2jl47548o


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